インスタント・メッセンジャ、VoIP、IPテレビ電話の仕組み

共通科目情報処理(上級)、インターネットの仕組み、2006年02月28日

                                       電子・情報工学系
                                       新城 靖
                                       <yas@is.tsukuba.ac.jp>

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■最終発表(2)

■今日の重要な話

■インスタント・メッセンジャ

2人のユーザ間で短いテキスト(文字からだけなるデータ)を、即座に交換す るためのしくみ。

電子メールと異なり、通信相手がネットワークを利用している必要がある。 所在確認にも使える。

歴史

◆メッセージの配送

テキストの場合、中央のサーバを経由するものが多い。 サーバに対してユーザ登録が必要になる。

図? サーバのクラスタとクライアント

図? サーバを経由したメッセージの送受信

接続の時には、サーバを利用して、相手を探すが、実際のメッセージの交換は、 サーバを介さず、クライアント間で直接行われる方法も考えられる。 (「直接」といってもルータは存在する。)

図? サーバのクラスタとクライアント

図? クライアント間で直接メッセージのやりとり

◆プライベートIPアドレス

IP アドレスのうち、決してインターネットでは使わないと約束されている領 域がある。 この部分は、インターネットに接続しない機器を、組織内で接続するために使っ てもよい。

プライベートではない、普通のアドレスは、グローバル IP アドレスと 呼ぶことがある。

◆NAT

ルータで、IP アドレスやポート番号を変換することがある。 変換する目的には、次のようなもがある。

図? ルータ、クライアントを動かすPCが3台

図? ルータにおけるアドレス変換

異なる場所にあるプライベート・アドレスを持つパソコンの間では、一般的に、 直接通信を行うことができない。インスタント・メッセンジャの場合、グロー バル・アドレスを持つサーバを経由させることで、プライベート・アドレスを 持つパソコン間での通信を可能にしている。

◆Microsoft Passport

もともとは、シングルサインオンを実現するための認証システム。 ユーザ名とパスワードを集中管理する。一度あるサイトに接続する時に認証を 済ませたら、別の提携サイトに接続する時には認証を省略できる。

MSN Messenger や Windows Messenger で、 通信相手を識別するために使われている。 Hotmail にアカウントを登録すると自動的に使われる。 (その他にはそれほど普及していない。)

◆Yahoo!Messenger

日米で類似のクライアント・プログラムを利用している。 日米でユーザ登録が違うので、直接接続できない。

◆AIM (AOL Instant Messenger)

MacOSX iChat AV とも相互接続できる。 英語版のクライアントは、動画像での対話もできる。

◆Jabber

オープンソースのインスタント・メッセンジャのサーバとクライアント。 通信プロトコルとしては、 XMPP (The Extensible Messaging and Presence Protocol) という XML ベースのものを使っている。IETF で標準化されて、 RFC 3920 としてまとめられた。

Yahoo!Messenger, MSN Messenger, AOL Instant Messenger と、サーバを通じ て相互接続できる機能がある。

http://www.jabber.org/

Jabberクライアント

◆インスタント・メッセンジャの機能

◆IRC(Internet Relay Chat)

IRC (Internet Relay Chat) は、文字による遠隔会議のプログラムある。ある参加者が打ち込んだメッセー ジは、即座に他の行単位で参加している人全員に送られる(ネットワーク・ニュー スでは、1つの文書単位で、遅延がある)。

IRCの参加者は、何種類かのプログラムを使って近くのサーバ・プログラムに 接続して、メッセージを送受信する。サーバ・プログラムは、 他のサーバ・プログラムとの間でメッセージの交換する。結果として世界中 の、地理的に離れている参加者の間でメッセージの交換することができる。

IRC のサーバには、世界規模のものもあれば、日本国内のもの、組織内のもの がある。1つの IRC のサーバでも、複数の会議室があり、この会議室のこと を IRC では、 チャネル(channel) (チャンネル、チャンネル) と呼んでいる。

■VoIP(Voice over IP)

VoIP そのものの意味は、 TCP/IP による通信ネットワーク上で音声データを送受信すること。 単に音声データのファイルをコピーするのではなく、 実時間(リアルタイム)での対話(電話)を指すことが多い。

実時間(専門用語)とは、「(ほぼ同時に感じるくらい)速い」という意味で はなく、ある時間内に仕事を完了させることを保証するという意味。

TCP/IP のネットワークは、実時間で音声を流すのには適していない。

◆Best Effort

TCP/IP のネットワークは、Best Effort のネットワークである。 Best Effort に対して、予約ができるネットワークもある。 電話のネットワークは予約ができる。電話には、「通話中」で通じないことが ある。交換機の容量のせいで「通話中」になることもある。

◆遅延

TCP/IP のネットワークでは、通信遅延の保証がない。 しかも、遅延時間そのものが刻々と変化する。

衛星通信では、遅延は大きいが遅延時間は一定。

通信遅延が大きいと、電話としての対話が成り立たない。

◆圧縮

音声データをそのまま送ると、データ量が多くなる。 VoIP では、データ圧縮の技術が不可欠である。

◆暗号化

音声データをそのまま送ると、データ量が多くなる。 VoIP では、データ圧縮の技術が不可欠である。

◆セッションの確立

VoIP では、多くの場合、テキストのインスタント・メッセンジャとは異なり、 クライアント間での接続の時に利用されるだけである。 実際の音声データは、クライアント間で直接やりとりされる。

◆Skype

ユーザ間では無料の電話が使えるサービス。

Skype に対向して、無料で一般の電話にかけられるサービスを提供する会社が 現れた。

2005年に eBay (アメリカのオークション・サイト)に買収された。

◆日本でのIP電話

インターネット・サービス・プロバイダが、その回線を利用して付加サービス として電話サービスも提供することが多い。

同一プロバイダ間では、通話料を無料に設定していることが多い。プロバイダ 間で相互接続して無料にすることもある。

内部的にには、TCP/IP のルータを使うが、一般のインターネットを間に挟ま ない場合は、通信遅延の問題には強い。通信遅延が少ない場合は、050 の電話 番号が与えられる。

日本では、Skype のようなインターネットを使うものには、050 の番号は付加 されない。しかし、一度、着信した電話を転送するという技で、 2006年2月から 050 の番号が使えるようになった。。

■IPテレビ電話

VoIP と同様に、動画像をのせる。

インスタント・メッセンジャやVoIPプログラムの付加機能として普及 してきている。

◆テレビ会議

エコー・キャンセルとは、相手から届いた音声を再び相手に送り返さないこと。 (自分の声が、相手の音声と混じってスピーカから流れてこない。)

VoIPプログラムにも入っているが、うまく働かないことも多い。 1対1ならヘッドセットで対応できる。

■IPマルチキャスト

送信者が1人で、受信者が複数のメッセージを、TCP/IP (正確には、UDP/IP のデータグラム) のネットワークで送信すること。

動画像や音声など大量のデータを配信する時、複数人で同じデータを受信する 時に、同じメッセージを共有できる。

例:筑波大学で、100人の人が同じ 1M bps の動画像のデータを見る

単純な方法
100人 * 1M bps == 100 M bps のデータが、 大学と学外を結ぶ線を流れる。
マルチキャスト
人数にかかわらず、1M bps のデータが流れる。

◆「IPマルチキャスト放送」

日本の法律の用語。IP マルチキャストを使った、「放送」。

今までは、「放送」といっても、著作権法上は、インターネットを使う他のも のと同様に「通信」に分類されており、著作権管理の手間が大きかった。

2006年2月、政府の知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会は著作権法を改訂 し、「IPマルチキャスト放送」を「放送」として位置づけるという提言をきめ た。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/dai7/7gijisidai.html

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/22/news081.html


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Last updated: 2006/02/28 01:17:39
Yasushi Shinjo / <yas@is.tsukuba.ac.jp>