共通科目情報処理(上級)、インターネットの仕組み、2006年02月28日
電子・情報工学系
新城 靖
<yas@is.tsukuba.ac.jp>
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2人のユーザ間で短いテキスト(文字からだけなるデータ)を、即座に交換す
るためのしくみ。
電子メールと異なり、通信相手がネットワークを利用している必要がある。
所在確認にも使える。
歴史
- メインフレームにも存在。1台のコンピュータ内でのみ利用可能。ユー
ザは、電話回線で文字端末を使って中央のコンピュータに接続して使う。
- Unix write コマンド。1台のコンピュータ内でのみ利用可能。書き込み
が許可されている相手の端末に有無を言わさずメッセージを書き込む。
mesg コマンドで書き込み許可拒否を制御。
- 1983年 BSD Unix talk。TCP/IP 上で動作。
「talk who@hostname」の形式で利用する。
- phone (Unix用)。複数人でも使える talk 。
- 1996年 ICQ (Mirabilis社)
- AOL Instant Messenger, MSN Messenger, Yahoo! Messenger, iChat
- 1999年 Jabber/XMPP。
- 2003年 Skype (電話)
- 2005年 Google Talk
テキストの場合、中央のサーバを経由するものが多い。
サーバに対してユーザ登録が必要になる。

図? サーバを経由したメッセージの送受信
接続の時には、サーバを利用して、相手を探すが、実際のメッセージの交換は、
サーバを介さず、クライアント間で直接行われる方法も考えられる。
(「直接」といってもルータは存在する。)

図? クライアント間で直接メッセージのやりとり
IP アドレスのうち、決してインターネットでは使わないと約束されている領
域がある。
- 10.0.0.0 - 10.255.255.255
- 172.16.0.0 - 172.31.255.255
- 192.168.0.0 - 192.168.255.255
この部分は、インターネットに接続しない機器を、組織内で接続するために使っ
てもよい。
プライベートではない、普通のアドレスは、グローバル IP アドレスと
呼ぶことがある。
ルータで、IP アドレスやポート番号を変換することがある。
- NAT(Network Address Translation)
- NAPT(Network Address Port Translation)
- IP Masquerade
変換する目的には、次のようなもがある。
- プライベート IP アドレスを持つ機器をインターネットに接続する。
- グローバル IP アドレスを節約する。たとえば、複数のパソコンには、
それぞれ重複しないようにプライベート IP アドレスを割り当てる。ルータで
は、それら複数のプライベート IP アドレスを1個のグローバル IP アドレス
に変換する。
- 「方向」を考えながら変換することで、セキュリティを高める。
たとえば、内部から外部への TCP/IP の接続を許し、
外部から内部への接続を許さないように設定すれば、
内部のパソコンはインターネット上の Web ページにアクセスできるが、
外部から内部のパソコンに接続して攻撃することは防げる。
- IP アドレスを変更する時に一時的に使う。
- 内部的には複数台で構成しているコンピュータを外からは1台に見せかける。

図? ルータにおけるアドレス変換
異なる場所にあるプライベート・アドレスを持つパソコンの間では、一般的に、
直接通信を行うことができない。インスタント・メッセンジャの場合、グロー
バル・アドレスを持つサーバを経由させることで、プライベート・アドレスを
持つパソコン間での通信を可能にしている。
もともとは、シングルサインオンを実現するための認証システム。
ユーザ名とパスワードを集中管理する。一度あるサイトに接続する時に認証を
済ませたら、別の提携サイトに接続する時には認証を省略できる。
MSN Messenger や Windows Messenger で、
通信相手を識別するために使われている。
Hotmail にアカウントを登録すると自動的に使われる。
(その他にはそれほど普及していない。)
日米で類似のクライアント・プログラムを利用している。
日米でユーザ登録が違うので、直接接続できない。
MacOSX iChat AV とも相互接続できる。
英語版のクライアントは、動画像での対話もできる。
オープンソースのインスタント・メッセンジャのサーバとクライアント。
通信プロトコルとしては、
XMPP (The Extensible Messaging and Presence Protocol)
という XML ベースのものを使っている。IETF で標準化されて、
RFC 3920 としてまとめられた。
Yahoo!Messenger, MSN Messenger, AOL Instant Messenger と、サーバを通じ
て相互接続できる機能がある。
http://www.jabber.org/
Jabberクライアント
- テキストメッセージの1対1の送受信(基本)
- テキストメッセージのグループ通信(会議室、チャットルーム)
- ファイルの送受信
- 音声、動画像での通信。
- コンタクト(通信相手)の管理、ユーザの検索
◆IRC(Internet Relay Chat)
IRC (Internet Relay Chat)
は、文字による遠隔会議のプログラムある。ある参加者が打ち込んだメッセー
ジは、即座に他の行単位で参加している人全員に送られる(ネットワーク・ニュー
スでは、1つの文書単位で、遅延がある)。
IRCの参加者は、何種類かのプログラムを使って近くのサーバ・プログラムに
接続して、メッセージを送受信する。サーバ・プログラムは、
他のサーバ・プログラムとの間でメッセージの交換する。結果として世界中
の、地理的に離れている参加者の間でメッセージの交換することができる。
IRC のサーバには、世界規模のものもあれば、日本国内のもの、組織内のもの
がある。1つの IRC のサーバでも、複数の会議室があり、この会議室のこと
を IRC では、
チャネル(channel)
(チャンネル、チャンネル)
と呼んでいる。
VoIP そのものの意味は、
TCP/IP による通信ネットワーク上で音声データを送受信すること。
単に音声データのファイルをコピーするのではなく、
実時間(リアルタイム)での対話(電話)を指すことが多い。
実時間(専門用語)とは、「(ほぼ同時に感じるくらい)速い」という意味で
はなく、ある時間内に仕事を完了させることを保証するという意味。
TCP/IP のネットワークは、実時間で音声を流すのには適していない。
TCP/IP のネットワークは、Best Effort のネットワークである。
- データを送信したとしても、途中で失われることがある。その場合、TCP
では再送して回復を試みるが、必ず送り届けられる保証はない。
(UDP では、
自動的には再送はされない。)
時間切れで遅れなかったと報告されても、実際には送られていたということもある。
- 利用可能な通信帯域(あるいは、通信速度)が、変動する。混んでくる
と、データが失われないまでも、帯域が狭くなる(速度が遅くなる)。
Best Effort に対して、予約ができるネットワークもある。
- 通信を開始する時点で、途中のルータ(交換機)で利用可能な帯域
が予約できる。予約できない時には、そもそも通信の開始ができない。
- メッセージを送信できたか、送信できなかったかが必ずわかる。
電話のネットワークは予約ができる。電話には、「通話中」で通じないことが
ある。交換機の容量のせいで「通話中」になることもある。
TCP/IP のネットワークでは、通信遅延の保証がない。
しかも、遅延時間そのものが刻々と変化する。
衛星通信では、遅延は大きいが遅延時間は一定。
通信遅延が大きいと、電話としての対話が成り立たない。
音声データをそのまま送ると、データ量が多くなる。
VoIP では、データ圧縮の技術が不可欠である。
音声データをそのまま送ると、データ量が多くなる。
VoIP では、データ圧縮の技術が不可欠である。
VoIP では、多くの場合、テキストのインスタント・メッセンジャとは異なり、
クライアント間での接続の時に利用されるだけである。
実際の音声データは、クライアント間で直接やりとりされる。
ユーザ間では無料の電話が使えるサービス。
- Windows, Linux, MacOSX, PocketPC(Windows CE)などで利用可能。
- インスタント・メッセンジャとしてもつかえる。
- データの暗号化を行っている。
- NAT があっても、通信できる。グローバル・IPを持つ
Skype を起動したパソコン(サーバではない)を中継につかうこともある。
- 一般の電話にかけられる(有料)。
- 一般の電話から着信できる(有料)。
- ビデオの機能がついた(2005年)。
Skype に対向して、無料で一般の電話にかけられるサービスを提供する会社が
現れた。
2005年に eBay (アメリカのオークション・サイト)に買収された。
インターネット・サービス・プロバイダが、その回線を利用して付加サービス
として電話サービスも提供することが多い。
同一プロバイダ間では、通話料を無料に設定していることが多い。プロバイダ
間で相互接続して無料にすることもある。
内部的にには、TCP/IP のルータを使うが、一般のインターネットを間に挟ま
ない場合は、通信遅延の問題には強い。通信遅延が少ない場合は、050 の電話
番号が与えられる。
日本では、Skype のようなインターネットを使うものには、050 の番号は付加
されない。しかし、一度、着信した電話を転送するという技で、
2006年2月から 050 の番号が使えるようになった。。
VoIP と同様に、動画像をのせる。
インスタント・メッセンジャやVoIPプログラムの付加機能として普及
してきている。
- 多地点間で利用できることが求められる。
- エコー・キャンセルの技術が重要になる。
エコー・キャンセルとは、相手から届いた音声を再び相手に送り返さないこと。
(自分の声が、相手の音声と混じってスピーカから流れてこない。)
VoIPプログラムにも入っているが、うまく働かないことも多い。
1対1ならヘッドセットで対応できる。
送信者が1人で、受信者が複数のメッセージを、TCP/IP (正確には、UDP/IP
のデータグラム) のネットワークで送信すること。
動画像や音声など大量のデータを配信する時、複数人で同じデータを受信する
時に、同じメッセージを共有できる。
例:筑波大学で、100人の人が同じ 1M bps の動画像のデータを見る
- 単純な方法
- 100人 * 1M bps == 100 M bps のデータが、
大学と学外を結ぶ線を流れる。
- マルチキャスト
- 人数にかかわらず、1M bps のデータが流れる。
日本の法律の用語。IP マルチキャストを使った、「放送」。
今までは、「放送」といっても、著作権法上は、インターネットを使う他のも
のと同様に「通信」に分類されており、著作権管理の手間が大きかった。
2006年2月、政府の知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会は著作権法を改訂
し、「IPマルチキャスト放送」を「放送」として位置づけるという提言をきめ
た。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/dai7/7gijisidai.html
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/22/news081.html
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Last updated: 2006/02/28 01:17:39
Yasushi Shinjo / <yas@is.tsukuba.ac.jp>