インターネット

情報システム概論 I 

                                       電子・情報工学系
                                       新城 靖
                                       <yas@is.tsukuba.ac.jp>

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復習

目標

URL を打ち込んでから Web ブラウザに表示されるまでどんな要素が働いてい るか理解する。

情報処理の3つの形態

新城の定義。情報とは、コピーしても同じものと思えるもの。物は、コピーす ると別のものになる。お金は、情報だがコピーしてはいけない。

新城の定義(その2)。情報とは、情報処理の対象となるもの。情報処理とは、 次の3つ。

計算(computation)
数の加減乗除、文字列の比較・置き換え、選択など。 プログラミング言語でできることは、主にこれ。 メモリ中のものしか計算の対象にならない。 CPUは、メモリ中のデータしか書き換えられない。
通信(communication)
データをあるコンピュータ(プロセス)のメモリから別のコンピュータ(プロ セス)のメモリにコピーすること。
記憶(storage)
「整理」して、永続的な記憶にコピーする。
実際には、いろいろな要素が混じって、厳密には分類不可能。 記憶媒体を移動させる/共有すると通信になる。 通信内容を保存することもできる。

computerとcalculatorは違う。電卓。電子式卓上計算機。

ディジタル・コンピュータによる情報処理

人間による情報処理

内部でどうやっているかは、よくわからない。

外から見える人間の情報処理

インターネット

インターネットの定義。 なぜ事務室にコピー機があるのか。 情報のコピーにどんな意義があるのか。

小文字のan internet

ネットワークのネットワーク、つまり、いくつかのネットワー クが ルータ(router)というコンピュータを使って 相互接続されたもである。

ホスト、LAN、ルータ

最小のinternet(小文字)

ネットワーク とは、それぞれ独立した方針で運営されているコンピュータ・ネットワーク である。

インターネットではないコンピュータ・ネットワーク

LAN は、狭い範囲のコンピュータを接続するためのネットワーク。

大文字のThe Internet

固有名詞。 世界最大のインターネット(小文字)は、インターネット(大文字)と呼ばれる。

固有名詞としてのインターネットの意味

  1. TCP/IP という共通の通信プロトコルにもとづくネットワークのネットワーク
  2. このネットワークを活用し発展させる人々のコミュニティー
  3. このネットワークを通じて到達できる資源の集積

◆インターネットの始まり

現在のインターネットは、 ARPANET という、1960年代の終りにアメリカ国防省の資金による研究プロジェクトの結 果作られたネットワークが元になっている。ARPANET の研究成果の1つとし て、TCP/IP という通信プロトコルがある。
プロトコル(protocol), 通信プロトコル(communication protocol)
通信を行う機器、コンピュータ、あるいは、プログラムの間でどのよう な手順で行うかを定めた規則

◆電子メール到達可能

インターネットという言葉は、TCP/IP では到達できなくても、 何らかの方法で電子メールを交換できる範囲を意味することもある。

電子メールが、インターネットの「応用」で最も重要。

方法には、UUCP (Unix-to-Unix system copy, ファイルをダイアルアップでコ ピーする)などがある。

◆インターネットと電話

通信量で見た場合、 1994年まで世界最大のネットワークは、電話であった。 1995年では、インターネット上を流れるデータの通信量が、電話による音 声の通信量を超えた。

ネットワークとして見た時の電話の特徴

  1. つながっている機器は、電話機(音声と電気信号を変換する機械)である。
  2. ネットワークを流れるデータは、音声のみである。
  3. 電話には、電話番号が振られている。
  4. どの電話もどの電話とも接続可能である(例外あり)。
  5. 電話を掛ける時、電話を使う人は、電話番号を指定するだけでよい。 電話を使う人は、途中の通信を中継している交換機の存在を気にしなくてもよい。

インターネットの特徴

  1. つながっている機器は、コンピュータである。
  2. ネットワークを流れるデータは、コンピュータで扱えるデータ(ビットの並び、2進数)である。
  3. コンピュータにはIPアドレスと呼ばれる番号がふられている。
  4. どのコンピュータもどのコンピュータとも接続可能である(例外あり)。
  5. 通信をするとき、使う人は、IPアドレスを指定するだけでよい。 使う人は、途中の通信を中継しているコンピュータ(ルータ)の存在を気にしなくてもよい。

電話にはない、インターネットの特徴は、末端のコンピュータの力を借りて、 さまざまなサービスが提供できることにある。

◆インターネットへの路

問題:あるコンピュータをインターネットに繋ぐにはどうすればよいか。

答え:既にインターネットに繋がっている所になんとかしてつなぐ。

◆アクセスライン

自宅から電話局、または、インターネット接続サービス・プロバタイダまでの 回線を、アクセスラインとよぶ。 アクセスラインの先は、インターネット接続サービス・プロバイダ。

◆インターネット接続サービス・プロバイダ(Internet Service Provider, Network Service Provider)

NTTと同じような通信会社に分類される。ケーブルテレビ局などをのぞいて、 自前で通信媒体を持っている所は少なく、NTTなどから専用線を借りてイン ターネット接続サービスを提供している。

法律用語: 電気通信事業法

第一種通信事業者
自前で回線設備をもっている
第二種通信事業者
第一種通信事業者から回線を借りて通信サービスを提供する

◆接続形態

インターネット接続サービス・プロバイダまでの接続

図? インターネット接続サービス・プロバタイダまでの接続方法

図? インターネット接続サービス・プロバタイダまでの接続方法

◆基幹ネットワーク

インターネット接続サービス・プロバイダより先は、どうなっているか。

インターネット接続サービス・プロバイダ間も、仕組みとしては、ルータで接 続されている。 ルータ間の接続には、NTTなどから借りた専用線(銅線、光)が使われる。

図? インターネット接続サービス・プロバタイダま間の接続

図? インターネット接続サービス・プロバタイダ間の接続

インターネット接続サービス・プロバイダが直接相互接続している場合もあるが、 ある場所に置かれた特別なルータで相互接続されている場合もある。 この相互接続の場所を NSPIXP (Network Service Provider Inter eXchange Pint)CIX (Commercial Internet eXchange) とう。

世界のインターネットの中心は、アメリカである。世界各国は、基本的には、 アメリカのインターネットのどこかに接続する。 アメリカ以外の2国間の通信も、アメリカ経由になることが多い。

国内のインターネット接続サービス・プロバイダのいくつかは、独自の国際専 用回線をアメリカに向けて引いている。

アジアやヨーロッパにもアメリカを通らずに通信する回線も増えて来ている。

■インターネットで使えるサービス

インターネットで現在よく利用されているサービス(アプリケーション、 応用)には、次のようなものがある。

  1. 電子メール
  2. ネットワーク・ニュース
  3. ファイル転送(ftp)
  4. WWW (The World Wide Web)
  5. 遠隔ログイン
  6. 文字による対話
  7. 音声、動画像による1対1の対話、多地点間を結ぶ会議

「応用」とは、通信の専門用語。

■TCP/IPによるインターネットの仕組み

電子メールでもWWWでも、TCP/IPという仕組みを用いて通信を行っている。 この節では、TCP/IP の仕組みについて簡単に説明する。 大事な考え方には、次のようなものがある。

◆プロトコル・スタック

電子メールでもWWWでも、TCP/IPを用いた通信では、 のように、4つの プロトコルの 層(layer)( 通信の手順を決めた規則) が使われる。TCP/IP自身は、 TCP層ipそう という2つのプロトコルから成り立っている。 ネットワーク通信では、 さまざまなプロトコルが決められ、全体として層をなしている。この様子を、 プロトコル・スタック(protocol stack) と呼ぶ。

TCP/IPの4層モデル

TCP/IPにおけるプロトコル・スタック

◆データグラム

インターネットでは、大きなデータを小さなデータの断片(データグラム、 パケット)に分割して送る。 データグラム(datagram)は、データと電報(telegram)から作られた造語。

データグラムに分割することで、次のような利点がある。

◆IP

IP (Internet Protocol) は、(信頼性がない)データグラム転送サービスを提供する通信プロトコルである。 IPのデータグラムは、次のような性質を持つ。 データグラムは、 パケット と呼ばれることもある。

データグラムは、葉書に似ている。IPのデータグラムが配達 されるときに使われる番号が、 IPアドレス である。IPアドレスとしては、現在32ビットの整数が使われている。 (IPv6 では、IP アドレスは、128ビットになる。)

◆ルータの役割

ルータによるデータグラムの転送

ルータによるデータグラムの転送

ルータは、IPアドレスを見て、データグラムの送り先を判断する。

郵便局で、住所を見て、送り先を判断するのと似ている。郵便局は、一番末端 のもの(ポストから集配したり家に配ったりする)ではなくて、中間的な集配を する郵便局がある。

同様に、ルータも、自分自信は、最終到達地点のコンピュータを知らなくても、 別のルータに送るだけのようなものもある。

ルータは、隣のルータや回線が故障した時には迂回路を探す。 迂回絽がなければ通信は途絶する。

◆経路制御(ルーティング)

ルータとルータは、どの回線やルータが生きているか、通信速度はどうなって いるか等の情報を交換し会う。これらの情報を元に、各ルータは、受け取った データグラムを次の最適の経路/ルータに送る。

◆IPアドレスの表記

IPアドレス を表現する時には、普通、8ビットずつ区切って、0から255までの10進 数を4つで表現される。たとえば、次のように書く。

12.34.56.78
これは、10進数でいくつになるかを計算したい時には、次のようにして計算 する。
(((12 * 256)+34)*256+56)*256+78

◆TCP層

TCP(Transmission Control Protocol) は、IP の機能を利用して、信頼性のある(reliable)双方向の ストリーム転送サービス(stream transport service) を提供する通信プロトコルである。 ()。 ストリーム には、次のような性質がある。

TCPで通信をする時に、通信相手を識別するにはIPアドレスと ポート番号(port number) が使われる。ポート番号は、16ビットの整数で、よく使われる アプリケーション ( サービス ) には、あらかじめどの番号を使うかが決めらている。これを well-knownポート番号(well-known port number) という。

TCP/IPで2つのプロセスが通信をしている図

TCP/IPによりより提供されるストリーム

◆応用層

TCP層の上には、 応用層 が定義されている。この層では、電子メールの転送、ファイル転送、遠隔ログ イン、WWW、といった TCP/IP を利用するプログラムの間の通信方法が定義さ れている。

TCP/IPを使った通信は、まるでコンピュータ同士(プログラム同士)が電話で 会話するように進められる。

表? TCP/IPの上に定義されているプロトコルの例

ポート番号 プロトコルの名前 目的
21 FTP(File Transfer Protocol) ファイル転送
22 ssh 遠隔ログイン(ssh)
23 Telnet 遠隔ログイン(telnet)
25 SMTP(Simple Mail Transfer Protocol) 電子メールの転送
79 finger fingerコマンド
80 HTTP(HyperText Transfer Protocol) WWWのデータ転送
110 POP(Post Office Protocol Version 3) 電子メールの受信
119 NNTP(Network News Transfer Protocol) ネットワーク・ニュースの記事の転送
143 IMAP(Internet Mail Access Protocol) 電子メールの受信・保管
513 login 遠隔ログイン(rlogin)

◆物理層

IPのデータグラムを転送するためには、さまざまな物理的な媒体 (電線、光ケーブル、電波) が使わる。

IP の視点からは、LANアクセスライン も物理層と見なす。OSI 7層モデルでは違う。

ダイアルアップなどを使った通信では、 PPP(Point to Point Protocol)とい うプロトコルの上に、IPデータグラムが転送される。

◆ホストとルータ

ホスト
ネットワークに接続されているコンピュータの中で、ネットワークに1ヵ所の 出入り口( ネットワーク・インタフェース(network interface) )を持っているもの
ルータ
2ヵ所以上の出入り口を持っているコンピュータ
ルータは、ネットワークとネットワークを接続するた めのコンピュータである。 ルータは、入ってきたIPのデータグラムのIPアドレスを見 て、どのネットワークに送ればよいかを判断する。 ルータは、 ゲートウェー(gateway) と呼ばれることもある。

◆「ブロードバンド」

電話的定義
電話回線より速い
通信の専門用語
変調を行い、1つの線に複数の信号を同時に流す
世俗的な定義
通信速度が 500 k bps 以上のアクセスライン

◆LAN(Local Area Network)

部屋の中から大学キャンパス程度までの範囲を接続するためのネットワーク。 イーサネットと無線LANがよく使われる。

イーサネット

無線LAN Wi-Fi (Wireless Fidelity, ワイファイ) は、アメリカの業界団体が無線LAN の相互接続認定した機器。

◆ディジタル変調

ディジタル信号の0、1の並びを、電気信号へ変換する。 直交振幅変調 (QAM Quadrature Amplitude Modulation) は、AM とQM を組み 合わせる。

◆ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)

音声を流すための銅線(光ではない線)に、音声では使わない高い周波数の信 号を流してデータ通信を行う仕組み。DSL (Digital Subscriber Line, ディジ タル加入者回線)の一種。Asymmetric とは、上り下りを非対称にして、下りを 高速にしたもの。

音声
3.4KHz 以下
上り
25KHz-150KHz
下り
それ以上

変調は、QAM。

スプリッタは、音声の通信とデータ通信(上り/下り)を分ける。

◆光ファイバによるアクセスライン

NTT 等の電話会社は、光ファイバによるアクセスラインを商品としては、 100Mbps で売っている。技術的にはもっと高速な通信(10G bps程度) は可能。 線の部分よりも、ルータの速度が問題で押さえている。

銅線を使うものより、混信(漏話、cross talk)や雑音に強いので、電話局よ り離れても安定している。配線には銅線より手間がかかる。

◆同軸ケーブル

輪切りにすると、中心から、導線、絶縁体、外部導体(シールド)がある。単 純な線より、雑音に強い。イーサネット、テレビのアンテナ線(丸いもの)、 ケーブルテレビの配線にも使われる。

外側の導線が雑音を防ぐ。

イーサネットにも配線にも使われていたが、最近はイーサネットはより対線や 光ファイバが多い。

ケーブルテレビ会社が提供するインターネット接続サービスでは、各家庭には、 ADSL と同様に、スプリッタとモデム(ケーブルモデム)を置く。

◆モデム

モデムは、電話回線やケーブルテレビの線など もともとアナログ信号しか通らないような回線でディジ タル情報(ビットの並び)を送るための機器。電話回線につなぐモデムでは、 ディジタル情報(ビットの並び)は、音声(表す電気信号)に変換されて アナログの回線に送られる。反対側では、再びディジタル情報に戻される。

◆非シールドより対線(Unshielded Twisted Pair Cable)

UTPケーブル、より線ということもある。

線がよってあるので、雑音が相殺される。

イーサネットで使われているものは、線が8本(4ペア)。 速度によって、利用するペアが違う。

2種類ある。

ストレート
単純に結線されている。ハブとコンピュータを接続する時に使う。
クロス
ペアが逆になるように結線されている。ハブとハブを接続するために使う。 ハブがない時でも、2台のコンピュータを接続する時にも使える。
最近のハブやコンピュータは、ケーブルの違いを自動的に認識することが多い ので、ケーブルの種類に悩まなくてもよくなりつつある。古い機器では、区別 が大事。

◆携帯電話のCDMA(Code Division Multiple Access)

多重接続(Multiple Access)とは、同じ周波数帯で複数の局が同時に利用する 意味。同時といっても、複数の通信を区別する必要がある。その方法にはいく つかの方法がある。

携帯電話でデータ通信の方法 携帯電話の音声の通信でも、内部的には連続的な音声の信号を、ディジタル・ データに変換し、分割してパケットとして送り出している。

携帯電話の課金の方法には次の2つの方法がある。

◆Best Effort

TCP/IP のネットワークは、Best Effort のネットワークである。 Best Effort に対して、予約ができるネットワークもある。

■情報量と通信量の感覚

■DNS(Domain Name System)

◆名前、アドレス

コンピュータの世界では、ある物を指し示すための情報という意味の類語:

◆名前サービス

名前サービスとは、高レベルの名前を低レベルの名前に変換するサービス。

高レベルの名前
文字列、人間が解釈できる
低いレベルの名前
整数、コンピュータにとって都合がよい

名前サーバ(name server)
名前サービスを提供するプロセスは、
名前解決(name resolution)
名前から名前を指している番号に変換すること
リゾルバ(resolver)
名前サーバのクライアントとして名前解決をする部分

◆DNS

インターネットで使われている名前サービス。 基本的には、ホストの名前を IP アドレスに変換する。

DNS では、膨大な数のホスト名を含む名前空間を階層的にドメイン(領域)に 分割して管理している。この空間の構造は、木構造とも呼ばれる。

◆DNSの木構造

DNS(Domain Name System)のドメインとは、 膨大な数のコンピュータの名前を含む名前空間を階層的にドメイン (領域)に分割していることを意味する。

図3 名前空間のドメインへの分割

図3 名前空間のドメインへの分割

この空間の構造は、木構造としても見ることができる。

図4 名前空間の木構造としての見方

図4 名前空間の木構造としての見方

たとえば、次のような名前を考える。
host1.is.u-ust.ac.jp
このように、インターネットでのコンピュータの名前は、「.」 で区切られた文字列(文字の並び)である。この文字列で使える文字は、アル ファベット(大文字も小文字も同じだが普通は小文字だけが使われる)と数字、 ハイフン(マイナス)である。

host1.is.u-ust.ac.jp」を 図4で考えると、次のようになる。

host1.is.u-ust.ac.jp」を 図3で考えると、次のようになる。

◆ディレクトリの木構造

コンピュータのディレクトリ(フォルダ)は、全体では 木構造(tree structure) になっている。階層化ディレクトリ(hierarchical directory)と呼ばれるこ ともある。

◆URL

World Wide Web では、他のデータへの参照を実現するためにURL (Uniform Resource Locator) という形式を使う。次に、URL の例を示す。

http://www.tsukuba.ac.jp/education/college.html

http
HyperText Transfer Protocol。WWWのデータを保持しているプログラム と、WWWを表示するプログラムの間でデータをやり取りするときの形式を定め た約束。
www.tsukuba.ac.jp
そのデータを持っているコンピュータの名前。
/education/college.html
そのコンピュータの中での資源の名前(ファイルの名前)。最後の .html は、その資源がHTML で書かれている事を表わしている。

◆URL中の2つの木

URL には、2つの木構造の表記方法が混じっている。

◆URLを間違えた時/URLが変更された時

2種類のエラー 長い URL のどの部分が怪しいかを区別できるようにする。

エラーが出た時には、木構造で親を探してみる。

■クライアントとサーバ

インターネットで通信をプログラムを利用する時、 「クライアント」と「サーバ」という分けて考えることが多い。

例:

コンピュータが1台しかない場合、プログラムは1つでよい。通信をする場合 には、プログラム(コンピュータ)が2つになる。そのうちの1つのプログラ ム(またはコンピュータ)を、「クライアント」、もう1つを「サーバ」とい う。

◆クライアントとサーバに分けて考える意義

混沌とした通信を「構造化」してわかりやすくする。

図? プロセス5つ、構造化されていない通信パタン

図? 構造化されていないもの

図? プロセス5つ、構造化された通信パタン

図? 構造化されたもの

構造化プログラミング:分かりにくいgoto文をつかわないで、わかりやすい goto文だけ使う。

◆サービスの授受

元々の意味
クライアント(client)
サービスを受ける方、顧客
サーバ(server)
サービス(service)を提供する方

図? サービスの授受によるクライアントとサーバの定義

図? サービスの授受によるクライアントとサーバの定義

◆利用者数

サービスを提供する方は、1つのプログラム(コンピュータ)で複数の利用者 の面倒をみる。その結果、1台のサーバに複数のクライアントがつながる。

クライアント
一人で使うもの
サーバ
複数人で共有するもの

図? 複数のクライアントによるサーバの共有

図? 複数のクライアントによるサーバの共有

◆通信パタン

TCP/IP では、通信するプログラムとプログラムの間は、電話で会話をするよ うに通信が行われる。両方同時に話をすることは、(可能ではあるが)あまり 行われない。次のようなことを、繰り返すことになる。
クライアント
先に要求を送る、後で結果を受け取る
サーバ
先に要求を受け取る、後で結果を返す

図? 通信のパタンからみたクライアントとサーバの定義

図? 通信のパタンからみたクライアントとサーバの定義

◆接続方法

TCP/IP の通信では、通信を始める前に、まず、通信路を作る作る必要がある。 これは、電話で話をする前に、まず、電話をかける操作を行うことと似ている。
クライアント
電話を掛ける方に相当する
サーバ
電話を待っている方

以上のように、クライアントとサーバは、いろいろな意味で使われる。これら の意味は、多くの場合、一致しているが、一致していないこともある。

◆能動的・受動的

通信を開始するパタンで、コンピュータ、プログラム、人間は、次の2つに分 類される。

能動的(active)
ほっといても自分でメッセージを発信し始める
受動的(passive)、受け身
何か言われると答えるが、自分ではメッセージを発信し始めることはない
クライアントとサーバから作られたシステムは、クライアントが能動的になり、 サーバは、受動的になることが多い。

図? 能動的なクライアントと受動的なサーバ

図? 能動的なクライアントと受動的なサーバ

例:WWWサーバは、WWWクライアントから何か要求が来ない限り、ずっと 黙っている。

コンピュータを使う時には、人間が能動的になり、コンピュータが受動的にな る。

テレビを見ている時には、人間が受動的になり、テレビが能動的になる。

講義形式の授業では、サービスの授受では、教官がサーバで、学生がクライア ントになる。通信の開始の方法では、教官が能動的になり、学生が受動的にな る。

大学以上では、学生は、能動的になることが求められている。

■HTTPとWebサーバ

WWW ページのデータは、 WWW サーバ ( httpd ) が保存している。 WWW クライアント(ブラウザ)は、WWW サーバから WWW ページのデータを取り寄せる。

この時使われる通信プロトコルをHTTP ( Hyper Text Transfer Protocol ) という。

WWW サーバには何種類もある。 情報学類で使っている WWWサーバのプログラムの名前は、Apache

◆Apache の動作

起動時に設定ファイルを読み込み、要求を待つための TCP/IPのポートをいくつか(標準ではポー ト番号80番)を作成する。

図? 図? Apache の動作

図? Apache の動作

◆HTTP

WWW のクライアント(普通はWWWブラウザ)からの要求は、 HTTP によりサーバに伝えられる。 普段は、これら のプロトコルを直接人間が手で打ち込む必要はないが、WWWサーバの設 定を行なう過程では、確認のために telnet コマンドで接続して、直接手で打つ。

◆HTTPの要求

プロトコルは、実際には比較的簡単である。 よく使われるクライアントからサーバに送られる要求 ( メソッド(method) ) は、2種類だけ。 例:次のような URL のページをアクセスする。
http://www.domain/dir1/file1.html
クライアントは、URL のうちのホスト部分を抜きだし、これと標準の 80ポート番号(80)を使って、TCP/IP のコネクションを張る。

クライアントは、HTTP で次のような要求を送る。

GET /dir1/file1.html HTTP/1.0[←]
[←]
([←] (Return, Enter)は、2つ必要。)

◆ファイルとの対応

WWWサーバは、普通は、このファイルは、あるディレクトリを起点にしたファ イル名になっている。 この起点となるディレクトリを ドキュメント・ルート・ディレクトリ(document root directory) という。 このディレクトリは、Apache では、標準で次のようになる。
/usr/local/apache/htdocs/

coins では、/var/www/htdocs/。

上の GET 要求に相当するファイルは、次のファイルになります。

/usr/local/apache/htdocs/dir1/file1.html

◆応答

Apache は、このファイルを開き、内容を読み込む。そして、こ の内容を、HTTP の応答(response)として、クライアントに返す。
HTTP/1.1 200 OK
Date: Sun, 12 Feb 2006 11:14:56 GMT
Server: Apache/1.3.27 (Unix)  (Red-Hat/Linux) DAV/1.0.2 mod_perl/1.24_01
Last-Modified: Thu, 02 Feb 2006 10:38:03 GMT
ETag: "1cc006-4851-43e1e10b"
Accept-Ranges: bytes
Content-Length: 18513
Connection: close
Content-Type: text/html

<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN">
<html lang="ja">
<head>
<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=Shift_JIS">
<title>筑波大学第三学群情報学類</title>
<link href="main.css" rel="stylesheet" type="text/css">
<META http-equiv="Content-Script-Type" content="text/javascript">
<META http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css">
<script type="text/javascript" src="navi.js"></script>
</head>

<body ...>
<table width="750" border="0" cellspacing="0" cellpadding="0" align="center">
...
 </table>
</body>
</html>

◆ステータス、メタデータ、データ

HTTP の応答の第一行は、ステータス(成功か失敗かを表す)。 200 は、エラーがなく成功したという意味。

アクセスされた日付、データの日付、データの型と長さが現れる。 Content-Type:text/htmlならば、 HTML で書かれたページの意味。 インラインイメージなら、 なら image/gifimage/jpeg になる。

このような情報は、情報そのものではなくて、情報に関する情報という意味で メタ情報(メタデータ)という。

空行の後に、実際のデータが続く。

◆HTTP要求のオプション

HTTP の要求の最初の行は、必須のパラメタ(引数(ひきすう))で、 要求行(request line)と呼ばれる。 それに続き、付加的なパラメタ(オプション)を渡すことができる。

例:ブラウザは、テキストしか受け付けない。

GET /dir1/file1.html HTTP/1.0[←]
Accept: text/*
[←]
例:日本語と英語が受け入れ可能である
GET /dir1/file1.html HTTP/1.0[←]
Accept-Language: Japanese, en
[←]
例:ブラウザの種類は、FireFox
GET /dir1/file1.html HTTP/1.0[←]
User-Agent: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X Mach-O; ja-JP-mac; rv:1.8.0.1) Gecko/20060111 Firefox/1.5.0.1
[←]

■電子メール

メールリーダ、配送プログラム、アクセスサーバ、

図? 電子メールの配送


Last updated: 2006/02/13 02:44:19
Yasushi Shinjo / <yas@is.tsukuba.ac.jp>