システムプログラム(第7回): 受け取った文字列をそのまま返すサーバ(fork無し版)

                                       筑波大学 システム情報系 情報工学域
                                       新城 靖
                                       <yas@cs.tsukuba.ac.jp>

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http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~syspro/2018/2018-05-30 /echo-server-nofork-fdopen.html
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http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~syspro/2018/
http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~yas/

echo-server-nofork-fdopen.c

TCP/IP のポート番号 7 (echo) では、受け取ったデータをそのまま返すサー ビスを提供している。以下は、これと同じような機能を提供するサーバである。 複数の接続先(クライアント)の要求を同時に処理するために、クライアント ごとに fork() システム・コールで専用の子プロセスを作る。

主要部分は、講義資料のメインのページにある。 このページにあるもの、その他の細かい部分である。

print_my_host_port()

print_my_host_port() は、telnet で接続する時のヒントを表示する。
 119:	#define HOST_NAME_MAX 256
 120:	void
 121:	print_my_host_port( int portno )
 122:	{
 123:	        char hostname[HOST_NAME_MAX+1] ;
 124:	
 125:	        gethostname( hostname,HOST_NAME_MAX );
 126:	        hostname[HOST_NAME_MAX] = 0 ;
 127:	        printf("run telnet %s %d \n", hostname, portno );
 128:	}
 129:	
gethostname() システムコールで自分自身のホスト名を取り出している。(正 式には、gethostname() の結果とインターネット的なホスト名(IPアドレスと 対応している))が一致して異ないことがある。

coins では、2018年5月現在、IPv4 を主に使い、普通のホスト名ではIPv4 のIPアドレスが返されるようにっている。IPv6 のIPアドレスは、ホスト名の末尾 に v6 を付けた名前で引けるようなっている。たとえば、 crocus10.coins.tsukuba.ac.jp なら、IPv4 の IP アドレス、 crocus10v6.coins.tsukuba.ac.jp なら、IPv6 の IP アドレスが引けるように なっている。

一般的には、同じホスト名で IPv4 と IPv6 の両方のアドレスを登録すること もできる。移行の過程では、片方のアドレスで接続を試みて時間切れを起こし た後に別のアドレスで接続を試みるとしう処理が入るために、応答時間が増大 することがある。

tcp_peeraddr_print()

tcp_peeraddr_print() は、通信相手(peer)のアドレス(TCP/IPの場合、IPアド レスとポート番号)を表示する。
 130:	void
 131:	tcp_peeraddr_print( int com )
 132:	{
 133:	        struct sockaddr_storage addr ;
 134:	        socklen_t addr_len ; /* MacOSX: __uint32_t */
 135:	
 136:	        addr_len = sizeof( addr );
 137:	        if( getpeername( com, (struct sockaddr *)&addr, &addr_len  )<0 )
 138:	        {
 139:	                perror("tcp_peeraddr_print");
 140:	                return;
 141:	        }
 142:	        printf("[%d] connection (fd==%d) from ",getpid(),com );
 143:	        sockaddr_print( (struct sockaddr *)&addr, addr_len );
 144:	        printf("\n");
 145:	}
 146:	
通信相手のアドレス(IPアドレスとポート番号)は、getpeername() システムコー ルで得られる。得たアドレスを、sockaddr_print() に渡して表示している。

sockaddr_print()

sockaddr_print() は、引数で与えられた struct sockaddr に含まれる IP アドレスとポート番号を画面に表示する関数である。
 147:	void
 148:	sockaddr_print( struct sockaddr *addrp, socklen_t addr_len )
 149:	{
 150:	        char host[BUFFERSIZE] ;
 151:	        char port[BUFFERSIZE] ;
 152:	
 153:	        if( getnameinfo(addrp, addr_len, host, sizeof(host),
 154:	                        port, sizeof(port), NI_NUMERICHOST|NI_NUMERICSERV)<0 )
 155:	                return;
 156:	        if( addrp->sa_family == PF_INET )
 157:	                printf("%s:%s", host, port );
 158:	        else
 159:	                printf("[%s]:%s", host, port );
 160:	}
 161:	
IP アドレスは、IPv4 では、32 ビット(int)であり、 ポート番号は、16 ビット(sort)である。 ここでは、getnameinfo() ライブラリ関数を用いてホスト名とポート番号の 文字列表現に変換している。この時、NUMERIC と指定しいるので、 IPv4 では、ドット「.」で区切られた10進数4つになる。

getnameinfo() が使われている部分では、以前は、gethostbyaddr() が使われ ていた。

tcp_acc_port()

tcp_acc_port() は、 通信路の開設 の仕事のうち、サーバ側で接続要求受付用ポートを作る関数である。
 162:	#define PORTNO_BUFSIZE 30
 163:	
 164:	int
 165:	tcp_acc_port( int portno, int ip_version )
 166:	{
 167:	        struct addrinfo hints, *ai;
 168:	        char portno_str[PORTNO_BUFSIZE];
 169:	        int err, s, on, pf;
 170:	
 171:	        switch( ip_version )
 172:	        {
 173:	        case 4:
 174:	                pf = PF_INET;
 175:	                break;
 176:	        case 6:
 177:	                pf = PF_INET6;
 178:	                break;
 179:	        default:
 180:	                fprintf(stderr,"bad IP version: %d.  4 or 6 is allowed.\n",
 181:	                        ip_version );
 182:	                goto error0;
 183:	        }
 184:	        snprintf( portno_str,sizeof(portno_str),"%d",portno );
 185:	        memset( &hints, 0, sizeof(hints) );
 186:	        ai = NULL;
 187:	        hints.ai_family   = pf ;
 188:	        hints.ai_flags    = AI_PASSIVE;
 189:	        hints.ai_socktype = SOCK_STREAM ;
 190:	        if( (err = getaddrinfo( NULL, portno_str, &hints, &ai )) )
 191:	        {
 192:	                fprintf(stderr,"bad portno %d? (%s)\n",portno,
 193:	                        gai_strerror(err) );
 194:	                goto error0;
 195:	        }
 196:	        if( (s = socket(ai->ai_family, ai->ai_socktype, ai->ai_protocol)) < 0 )
 197:	        {
 198:	                perror("socket");
 199:	                goto error1;
 200:	        }
 201:	
 202:	#ifdef  IPV6_V6ONLY
 203:	        if( ai->ai_family == PF_INET6 )
 204:	        {
 205:	                on = 1;
 206:	                if( setsockopt(s,IPPROTO_IPV6, IPV6_V6ONLY,&on,sizeof(on)) < 0 )
 207:	                {
 208:	                        perror("setsockopt(,,IPV6_V6ONLY)");
 209:	                        goto error1;
 210:	                }
 211:	        }
 212:	#endif  /*IPV6_V6ONLY*/
 213:	
 214:	        if( bind(s,ai->ai_addr,ai->ai_addrlen) < 0 )
 215:	        {
 216:	                perror("bind");
 217:	                fprintf(stderr,"Port number %d\n", portno );
 218:	                goto error2;
 219:	        }
 220:	        on = 1;
 221:	        if( setsockopt( s, SOL_SOCKET, SO_REUSEADDR, &on, sizeof(on) ) < 0 )
 222:	        {
 223:	                perror("setsockopt(,,SO_REUSEADDR)");
 224:	                goto error2;
 225:	        }
 226:	        if( listen( s, 5 ) < 0 )
 227:	        {
 228:	                perror("listen");
 229:	                goto error2;
 230:	        }
 231:	        freeaddrinfo( ai );
 232:	        return( s );
 233:	
 234:	error2:
 235:	        close( s );     
 236:	error1:
 237:	        freeaddrinfo( ai );
 238:	error0:
 239:	        return( -1 );
 240:	}
 241:	

この関数の引数は、ポート番号(整数値)と IP のバージョン(4か6、整数値)を取る。 まず、IPのバージョンに応じて、Protocol Family (PF_) を選択している。 socket() の引数で、PF_INET/PF_INET6 の変りに、AF_INET/AF_INET6 と書いて もよい。ここでは、Protocol を選んでいるので、PF_ が正しいが、実際には、 PF_INET と AF_INET は同じであり、また、多くのテキストで混在されて使われ いる。

次に、getaddrinfo() を使って、socket() システム・コール、および、 bind() システム・コールに渡すためのパラメタを整えている。 hints.ai_family には、 PF_INET か PF_INET6 を設定している。 hints.ai_socktype に SOCK_STREAM を設定している。これにより、TCP を意味 する。ポート番号は、引数で与えられたもの(を、文字列に変換したもの)を指 定している。

hints.ai_flags には、AI_PASSIVE を指定し、 getaddrinfo() の第一引数とし て NULL を指定している。複数の IP アドレスがある時には、どれに要求が来 ても受け付ける。特定の IP アドレスを指定すると、そのアドレスに来た要求 だけを受け付けるようになる。IPv4 の時代には、IPアドレスとして INADDR_ANY という定数を指定することが一般的であった。

次に、クライアント側と同様に、ソケットを、socket() システムコールで作成 している。 PF_INET と SOCK_STREAMの組み合わせ または、 PF_INET6 と SOCK_STREAMの組み合わせ なので、TCP を使うことを意味する。

IPv6 の場合、setsockopt() で IPV6_V6ONLY というオプションを有効にしてい る。これで、IPv6 が指定された時には、IPv6 のみで接続要求を受け付ける。 このオプションをつけないと、IPv4射影アドレス(IPv4-mapped address)でも 要求を受け付けることになる。意図せずこのアドレスでもサービスを提供する とセキュリティ上の問題が生じることがある。

ソケットが作成できたら、bind() システムコールで、サーバ側で利用するア ドレス(IPアドレスとポート番号)を設定する。IP アドレスとポート番号は、 getaddrinfo() で返されたものを使っている。

次に、setsockopt() で、SO_REUSEADDR オプションを設定している。これによ り、同じ IP アドレスとポート番号で(連続して)サービスを提供することがや りやすくなる。ただし、可能性は低いが、前のプロセスと新しいプロセスで、 通信内容が混じってしまう危険性がある。

次に、listen() システムコールにより、要求受け付けを開始する。第2引数 は、最大何個のクライアントを接続要求待ちで待たせるか(待ち行列の長さ) を指定する。 重たいサーバを設計する時には、キューの長さを調節する。Apache (WWW サー バ) などでは、500 程度になっていることがある。

注意:このプログラムには 複数のクライアントに対してサービスを同時に提供できない という問題がある。

fdopen_sock()

fdopen_sock() は、TCP/IP による通信を、fprintf(), fgets(), fread() 等で 行えるようにする関数である。 この関数は、 クライアント側 とまったく同じである。
Last updated: 2018/05/27 17:23:52
Yasushi Shinjo / <yas@cs.tsukuba.ac.jp>