暗号、SSH、SSL

					2006年06月16日
コンピュータリテラシ

                                       筑波大学 電子・情報工学系
                                       コンピュータサイエンス専攻
                                       新城 靖
                                       <yas@is.tsukuba.ac.jp>

このページは、次の URL にあります。
http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~yas/coins/literacy-2006/2006-06-16
あるいは、次のページから手繰っていくこともできます。
http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~yas/
http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~yas/

■連絡事項

■補足

ソフトウェアの分類方法
オープン・ソース
ソース・プログラムが公開されている。
coins で使われているソフトウェアは、オープン・ソースのプロジェクトが、 ソフトウェアのソース・プログラム(ソース・コード)を公開している。

■ネットワーク上の脅威

悪意を持つ人、プログラムによる脅威。
盗聴
本来の通信相手以外の人が 通信内容のコピーを入手する。例:クレジットカード番号を奪われる、 プライバシが侵害される。
改ざん
通信内容を書き換える。例:
なりすまし
悪意のある人が、他の人に成り代わる。
インターネットで流れるデータは、流れるデータを見れば簡単に内容を知るこ とができる。(1つひとつのデータグラムは、はがきと同じ。)

ネットワークには、次のものを含めて考える

■暗号

◆暗号に関する基本用語と安全性

暗号とは、情報の意味が当事者以外にはわからないように情報を変 換することである。

図? 暗号化、復号化、平文、暗号文、解読、鍵

図? 暗号の考え方

平文(ひらぶん(clear text))
元の情報
暗号文(cipher text)
変換された情報
平文、暗号文といっても、文字だけでなく、画像や音声などコンピュータが扱 えるあらゆるデータ(ビット列)が想定されている。

暗号化(encrypt)
平文を暗号文に変換すること。暗号化鍵が必要。
復号化(decrypt)
暗号文を平文にもどすこと。復号化鍵が必要。
鍵(key)
暗号化や復号化に必要な(短い)データ。
解読
当事者以外の第三者が、暗号文を元にもどすこと、あるいは、復号化鍵を得る こと。
暗号化や復号化の方法(アルゴリズム)は、何種類もある。

◆鍵を使うことの重要性

問: 答え:

暗号化の方法が秘密になっていると、一見、より強そうにみえる。しかし、そ の暗号が、強いのか弱いのか調べる方法がない。攻撃すると、簡単に落ちるか もしれない。暗号化の方法を提供している者が信頼できない時には使えない。

◆長い鍵を使うことの重要性

暗号の安全性は、鍵の安全性によっている。

◆暗号の経済学

暗号の安全は、解読にかかるコストを大きくすることで、解読され た平文から得られる利益を相対的に小さくすることに依存している。

鍵を長くするだけで、安全性が指数関数的に高くなる。 鍵を1ビット長くすると、解読時間が2倍になる。 (「鍵の長さを2倍にすると解読時間が2倍になる」は、誤り)。

図? 指数関数

図? 指数関数

図? 指数関数

図? 指数関数

パスワードは、コンピュータの中では、暗号化の鍵として使われる。 長いパスワードは、破られにくい。1文字(大文字小文字数字記号)増やすと、 総当たりで解読に要する時間が、50倍から100倍近くかかるようになる。

◆共通鍵暗号系と公開鍵暗号系

暗号の方法は、大きく2つに分類される

共通鍵暗号系(対称暗号系)
暗号化鍵と復号化鍵が同じ(または片方から片方が簡単に計算できる)。 公開鍵暗号系と比較して軽い(処理が高速である)。
公開鍵暗号系(非対称暗号系)
暗号化鍵から復号化鍵を容易に類推できない。 共通鍵暗号系と比較して重たい(処理が低速である)。

◆共通鍵暗号系による暗号通信

同じ鍵で暗号化と復号化を行う。

図? 共通鍵で暗号化

図? 共通鍵暗号系による暗号通信

◆Caesar暗号

Caesar暗号は、置換暗号(substitution cipher)の1つ。置換暗号では、各 文字あるいは文字群が、それぞれ別の文字あるいは文字群に置換される。

Caesar暗号は、知れている最後の暗号である。 平文アルファベットをN文字ずらした暗号文アルファベットに変える。

N=2 の時の対応表

abcdefghijklmnopqrstuvwxyz
CDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZAB
暗号の説明では、平文を小文字で、暗号文を大文字で書く習慣がある。

N=13 で、大文字小文字を保存する方法を、rot13 暗号という。rot13 は、電 子メールやネットワーク・ニュースで「ネタばらし」の部分を書く時に使われ る。

漢字の場合、rot47 という方法がある。nkf -r で、rot13/47 が使える。

◆乱数(random numbers)

数の集合から、無作為抽出で抜き出された数。

真性乱数。ビット列にすると、0と1の発生確率がそれぞれ1/2で、各ビッ トは他の部分と独立(iid(independent and identically distributed)) である。

物理乱数。量子力学の効果を増幅してディジタル化したもの。 平滑化して0,1のバランスをとれば、真性乱数になる。

疑似乱数(pseudo random number)。種(seed)と呼ばれる入力ビットパタンを基 に計算された、種よりも長いランダムに見えるビット・パタン。種が決まれば 出力乱数は一意に決まる。

◆乱数を使った暗号

Caesar暗号では、定数だけずらしていた。定数ではなく、文字の長さの乱数の 列を使い、文字ごとに乱数の数だけだけずらす。

例:

乱数表: 0 18 19 22 22  7  9  4 14  3
 平文: h  e  l  l  o  w  o  r  l  d
        8  5 12 12 15 23 15 18 12  4
暗号文: H  W  E  H  K  D  X  V  Z  G
   : 8 23  5  8 11  4 24 22 26  7
乱数表そのものや、大きな乱数表の中でどこから使い始めるかを鍵にすること ができる。

真性乱数を使うと、解読する方法は数学的に存在しないことが証明されている。

しかし、真性乱数を使うことはコストが大きい。 送信側と受信側で同じ真性乱数を作るのが大変である。

乱数表を記憶する変わりに、疑似乱数を使う方法がある。使う疑似乱数の性質 が悪いと簡単に解読される。

実際には、文字をずらすのではなく、足し算、引き算や、排他的論理和と呼ば れる計算が使われることが多い。

◆転置暗号

Caesar暗号や乱数を用いる暗号では、平文の文字の順序を変えずに、文字を置き換 える。これを置換暗号という。これにたいして、転置暗号(transposition cipher)では、平文の文字の順序を入れ替えるが、文字の置き換えは行わない。 (下の例では、大文字小文字が変わっているが、これは暗号化の説明のために 変えて書いているだけである。)

次は、転置暗号の1つ、コラム転置の例である。キーは、同じ文字を含まない 1個の単語や熟語である。このキーでコラムに番号付けをする。たとえばコラ ム1は、アルファベットで先頭に近い文字の下のコラムとなる。

MEGABUCK
--------
74512836
--------
pleasetr
ansferon
emillion
dollarst
omyswiss
bankacco
untsixtw
otwoabcd
 平文: pleasetransferonemilliondollarstomyswissbankaccountsixtwotwo
暗号文: AFLLSKSOSELAWAIATOOSSCTCLNMOMANTESILYNTWRNNTSOWDPAEDOBUOERIRICXB

◆DES

DES(Data Encryption Standard)は、アメリカ商務省標準局 (NBS, National Bureau of Standard, 現在のNIST, National Institute of Standrds and Technology)が1977年に定めた暗 号標準である。IBM社による提案が元になっている。DESは、 アメリカ政府内で、コンピュータ・データのうち、非機密だが取扱 い注意(unclassified but sensitive)のデータを暗号化するため の標準である。DESを一般の商用にも使うことを推奨している。 たとえば、Unixのパスワード・ファイルは、DESにより暗号 化されている。

DESは、対称暗号系(慣用暗号系)の1つであり、暗号化と復号 化に同一の鍵(56ビット)を用いる。DESは、転時暗号の一種 である。転時暗号では、平文の文字の順序(コンピュータでは、ビッ ト)を入れ替えるものである。DESでは、64ビットの平文につ いて、鍵をもとにビットの入れ替えを16段繰り返す。

DES は、Unix のパスワードのハッシュ関数として使われている。

◆AES

Advanced Encryption Standard。

アメリカ NIST (National Institute of Standards and Technology) が 定めたDES に変わる新しい標準。 全世界に対して公募され、ベルギーのJoan Daemen とVincent Rijmenにより開発されたRijndael方式が採用された。鍵の長さは、 128ビット、192ビット、256ビットから選べる。

◆一方向関数

y=f(x) で、x から y を計算することは簡単だが、y から x 逆を計算するこ とは非常に難しい関数。

◆ハッシュ関数(メッセージ・ダイジェスト)

元データからデータの指紋と呼ぶべきような特徴的な数(普通は元データの長 さによらず固定長)を抽出するもの。

チェックサムや CRC (Cyclic Redundancy Check) にも似ているが、暗号やディ ジタル署名で使われるのは、Collision Proof 性が求められる。

ハッシュ関数の結果を、fingerprint というこがある。

◆暗号によるハッシュ関数の実現

暗号を使えば、一方向関数が作れる(暗号を使わなくても一方向関数を作るこ とはできる)。

one_way_function( x )
{
	return x をキーとして 0 を暗号化したもの ;
}
Unix の /etc/passwd や Apache の htpasswd で遣われているものは、DES を25回繰り返して使って 作ったハッシュ関数の結果。パスワードそのものは、保存されてない。

◆MD2、MD4、MD5

RSA社の B.Kaliski や R.Rivest らによって提案されたメッセージ・ダイジェ ストのアルゴリズム。任意の長さのデータから128ビットのメッセージ・ダイ ジェストを生成する。

◆SHA1 (Secure Hash Algorithm 1)

アメリカの NIST(National Institute of Standards and Technology) が 定めた標準的なメッセージ・ダイジェスト。 出力は、160 ビット。

◆公開鍵暗号系

公開鍵暗号系(非対称暗号系)では2つの異なる鍵を用いる。 便宜上、この2つを公開鍵と秘密鍵と呼ぶ。

これらの鍵は、互いに相手の逆関数になっている。

図? 公開鍵暗号を使った暗号通信の手順

図? 公開鍵暗号を使った暗号通信の手順

  1. 受手は、公開鍵と秘密鍵の組を作り、公開鍵を誰でも読めるようにする。
  2. 送手は、受手の公開鍵を暗号化鍵として用いて暗号文を作り、送る。
  3. 送手は、受け取った暗号文を、自分の秘密鍵を復号化鍵として用いて復号化し、 元の平文を得る。

ここで、公開鍵から秘密鍵を計算することは難しい。ある平文を公開鍵で暗号 化してみたところで、秘密鍵を得ることは難しい。

公開鍵暗号の利点は、鍵を管理する手間が掛らないこと。

共通鍵暗号
情報を交換する間で鍵を安全に共有しなければならない。しかも、通信 相手ごとに鍵を変える必要がある。
公開鍵暗号
受手ごとに、1つの暗号化鍵を公開するだけでよい。今までに通信をしたこと がない人からでも、暗号化されたメッセージを受け取ることが可能である。
公開鍵暗号系は、暗号通信だけでなくディジタル署名や利用者認証、電子現金 にも応用される。

◆RSA

Rivest Shamir Adleman。

RSA暗号は、Rivest, Shamir, Adleman の3人によって開発され た公開鍵暗号系である。RSA暗号の安全性は、大きな数を素因数 分解することの難しさに基づく。北米では、RSAは、2000年 に特許が切れた。

◆楕円曲線暗号

Elliptic Curve Cryptosystem。

公開鍵に基づく暗号化の1つの方法。買得の難しさは、楕円曲線上の離散対数 問題を解くのと同程度と言われている。RSA よりも鍵が短くて高速である。

◆認証

認証とは、情報の正当性や完全性を確保する技術である。

利用者認証
アクセスしてきた人が正当か否かを判定する。 しばしばパスワードや暗唱番号が用いられる。
ディジタル署名(メッセージ認証、電子署名)
通常の署名とおなじく、送られてきたメッセージが送信者本人のもので あることを識別、確認すること。

◆認証の例

◆man-in-the-middle攻撃

いくら暗号通信をしても、通信相手を認証しないと意味がない。 認証しない場合、man-in-the-middle攻撃に弱い。

A=攻撃者、攻撃者=Bで暗号通信

図? man-in-the-middle攻撃

◆ディジタル署名

ディジタル署名では、通常の署名と同様に、次のような性質が必要である。

ディジタル・データでは完全なコピーが簡単に作れるので、紙上の署名や捺印 よりも難しい。

公開鍵暗号系を使ってディジタル署名を行うことができる。

図? 公開鍵暗号を使ったディジタル署名の手順

図? 公開鍵暗号を使ったディジタル署名の手順

  1. (受手ではなく)送手は、公開鍵と秘密鍵の組を作り、公開鍵を誰でも 読めるようにする。
  2. 送手は、自分の秘密鍵を暗号化鍵として用いて暗号文を作り、送る。
  3. 送手は、受け取った暗号文を、送手の秘密鍵を復号化鍵として用いて復 号化し、元の平文を得る。この時、きちんと平文が得られた場合、その平文は、 その公開鍵の持ち主から送られてきたことがわかる。

メッセージ全体を暗号化する代わりに、メッセージを平文で送り、それにメッ セージを一方向関数(ハッシュ関数)と呼ばれる方法で計算した結果だけを、 秘密鍵で暗号化したものを送る方法もある。一方向関数では、計算結果から元 の値(メッセージ)を計算することが難しい。

ディジタル署名や利用者認証は、公開鍵暗号系ではなく、共通鍵暗号系を用い ても可能である。ただし、この場合、鍵を管理する信用できる管理センターが 必要となる。

◆公開鍵暗号を使った利用者認証

サーバへのログインを例に、これを説明する。

  1. ユーザは、サーバにログイン・アカウントを登録する時に、公開鍵と秘 密鍵を生成し、公開鍵をサーバに届け、秘密鍵を自分で保持する。
  2. ユーザは、通信回線を通じてサーバにアクセスしてきた時、サーバは乱 数を1つ生成し、その乱数をユーザの「公開鍵」で暗号化し、ユーザに送り返 す。
  3. ユーザは、送られてきた暗号化された乱数を、保持している秘密鍵で復 号化し、サーバに送り返す。
  4. サーバは、ユーザから返された乱数が正しければ、正当なユーザである と判定する。
次回の呼び出しでは、別の乱数を用いることで、通信を記録している傍受者に も対応することができる(challenge-response方式)。

単なる暗証番号の場合、通信を傍受されたら終り。 毎回違う数を使えば、傍受されていても平気。

◆鍵の確認

公開鍵で自由に鍵が得られたとしても、鍵か偽物だと、意味はない。

鍵がが本物であるかをどうやって確認するか。

では、その第三者は、信頼できるのか。

■SSH

Unix r系コマンドの置き換え。

◆r系コマンドの弱点

◆SSHでの解決方法

ホストの認証を、IP アドレスではなく、公開鍵で行う。

サーバは、2つの鍵と64ビットの乱数を送る。 クライアントは、乱数を送り返す。 乱数が一致したら、IP spoofing されていない。

クライアントは、セッション鍵(対称暗号系の鍵)をサーバの2つの公開鍵で 暗号化して送る。

対象暗号の鍵(セッション鍵)を生成し、公開鍵で送る。

これ以降の通信は、セッション鍵で暗号化される。

◆SSHでのユーザの認証

暗号化された通信絽が確立された後は、パスワードを流しても安全。

個人ごとに公開鍵での認証機能を利用したほうがよい。

◆SSHにおけるホストの公開鍵の確認

[再掲]

ssh (scp, WinSCP, Tera Term, PuTTY含む) で始めてあるホストに接続する時 には、警告が現れる。

ssh コマンド

% ssh ホスト名 -l ユーザ名 [←]
The authenticity of host 'ホスト名 (IPアドレス)' can't
be established.
RSA key fingerprint is 16進数32桁.
Are you sure you want to continue connecting (yes/no)? yes
Warning: Permanently added 'ホスト名 (IPアドレス)' (RSA)
to the list of known hosts.
ホスト名% [←]
PuTTY
The server's host key is not cached in the registry.
You have no guarantee that the server is the computer you think it is.
The server's rsa2 key fingerprint is
ssh-rsa 1024 16進数32桁
If you trust this host, hit Yes to add the key to PuTTY's cache and carry on connecting.
If you wan to carry on connecting just once, without adding the key to the cache, hit No.
If you do not trust this host, hit Cancel to abandon the connection.

この 16進数32桁 の数は、接続先のホストの公開鍵を、ハッ シュ関数 MD5 にかけた結果である。この32桁の数を目で確認することにより、 接続先のホストが正しい( man-in-the-middle攻撃が 行われていない)ことがわかる。

目で確かめる時には、次のものと比較する(2006年6月2日現在。変更される可能 性もある)。

icho
87:4d:e0:31:da:77:a7:7e:f0:c6:83:4c:e3:28:18:06
azalea1-60, balsam1-60, canna1-50
d8:b2:bd:32:c0:9d:80:16:dc:40:7e:73:03:25:4f:b9

◆トンネリング(port forwarding)

SSH で暗号化された通信路の中に一般のアプリケーションの通信を通す。 SSH 用語では、port forwarding という。

よくつかわれるもの。

使い方:

% cat bin/ssh-coins-mail [←]
#!/bin/sh
host=mail.coins.tsukuba.ac.jp
ssh -L 10143:$host':'143 -L 10110:$host':'110 -L 10025:$host':'25 $host $*
% []

自分自身(localhostが便利)のポート番号10143, 10110, 10025 に来た接続要 求を、リモートの host の143, 110, 25 に転送する。ssh の接続先(最後の $host)と、-L で指定するホストは必ずしも一致していなくてもよい。 ssh コマンドは、Unix、MacOSX、Cygwin で使える。Windows の TeraTerm や PuTTY でも使える。

図 ssh によるトンネリング(SMTP)、メール・リーダ、ssh、sshd、Postfix smtpd

図 ssh によるトンネリング(SMTP)

◆SSH1の弱点

SSH1 には、プロトコル上、いくつかの弱点が見つかっている。

SSH2 を使った方がよい。

RSA社が提唱している公開鍵を使ってセッション鍵(秘密鍵)を交換する 方式(PKCS1 1.5 )そのものに、脆弱性がある [1]。

PKCS -- Public-Key Cryptography Standards

[1] Daniel Bleichenbacher, "Chosen ciphertext attacks on RSA encryption standard PKCS #1", Advances in Cryptology, CRYPTO 98. Springer.

サーバ鍵を1時間に1回しか変えない。

SSH 1.5 は、1024 ビットの鍵を使っている。 これを破るには、2 20 + 2 19 回接続でよい。毎 秒、約 400 回。

1個所からの接続に上限を付ける。OpenSSH はそうなっている。 Distributed 攻撃には、弱そう。

OpenSSH
http://www.openssh.org/

◆sshにおける公開鍵による認証

SSH では、公開鍵暗号を使った利用者認証 が使える。

準備

利用

Unix のパスワードを利用する方法と比較した時の利点

◆ssh-agentの利用

ssh-agent を使えば、ログイン時には、パスフレーズを打たないでログインで きるようになる。

■SSL(Secure Sockets Layer)

SSL は、Netscape 社によって開発された通信路を暗号化する仕組み。 認証機能もある。 HTTP に広く使われている(他にも使える)。 SSL を IETF により標準化したものが、TLS(Transport Layer Security).

◆3種類認証モデル

良く使われるのは、2番目。 Twins の初期の問題。オレオレ証明書を提示していた。

認証には、証明書が使われる。 鍵の交換には、証明書に含まれている

◆証明書

X.509 形式(バイナリ)を、テキストに変換したものの例:

Certificate:
    Data:
        Version: 3 (0x2)
        Serial Number: 225985 (0x372c1)
        Signature Algorithm: md5WithRSAEncryption
        Issuer: C=US, O=Equifax Secure Inc., CN=Equifax Secure Global eBusiness CA-1
        Validity
            Not Before: Mar 13 03:01:02 2006 GMT
            Not After : Mar 13 03:01:02 2010 GMT
        Subject: C=JP, O=www.coins.tsukuba.ac.jp, OU=businessprofile.geotrust.com/get.jsp?GT22591421, OU=See www.rapidssl.com/cps (c)05, OU=Domain Control Validated - RapidSSL(R), CN=www.coins.tsukuba.ac.jp
        Subject Public Key Info:
            Public Key Algorithm: rsaEncryption
            RSA Public Key: (1024 bit)
                Modulus (1024 bit):
                    00:c8:11:30:5b:af:05:2a:22:9d:2a:4e:1d:b7:00:
                    5c:96:70:b4:c3:c1:6d:30:50:d2:5e:1e:0e:87:83:
                    df:5e:b1:ea:c0:98:d8:c5:cd:51:0c:34:3f:74:06:
                    0c:31:e5:9d:5d:b2:cc:b7:e5:2d:d4:c1:33:a0:bc:
                    21:3c:f3:d0:fb:0e:36:95:7f:37:59:1a:41:c3:84:
                    9b:12:3b:6f:39:70:ac:25:b4:4b:30:f6:fa:31:5f:
                    36:64:fd:56:d6:70:60:21:3a:51:0f:39:f8:42:95:
                    09:36:f9:fb:73:db:e7:34:59:c4:96:fa:fa:24:5e:
                    10:af:bc:a9:55:9d:7b:78:9d
                Exponent: 65537 (0x10001)
        X509v3 extensions:
            X509v3 Key Usage: critical
                Digital Signature, Non Repudiation, Key Encipherment, Data Encipherment
            X509v3 Subject Key Identifier: 
                DD:FA:B7:F1:41:4A:49:4D:31:BE:87:A1:4A:56:5D:2A:76:CF:E6:E4
            X509v3 CRL Distribution Points: 
                URI:http://crl.geotrust.com/crls/globalca1.crl

            X509v3 Authority Key Identifier: 
                keyid:BE:A8:A0:74:72:50:6B:44:B7:C9:23:D8:FB:A8:FF:B3:57:6B:68:6C

            X509v3 Extended Key Usage: 
                TLS Web Server Authentication, TLS Web Client Authentication
            X509v3 Basic Constraints: critical
                CA:FALSE
    Signature Algorithm: md5WithRSAEncryption
        56:1c:4a:f7:e7:a6:16:b0:6d:ed:cf:0c:c9:60:5b:3d:bc:43:
        a5:62:06:13:75:ec:6d:7c:b7:75:cc:0d:f3:02:8f:af:74:90:
        0f:69:8e:28:cc:e5:f8:7f:a2:5d:61:b1:fb:63:3b:31:83:15:
        da:11:c7:ea:62:b2:c9:ad:2e:26:4e:a0:fc:44:a1:16:90:11:
        79:7e:06:c8:23:63:59:7c:09:5f:5b:76:8f:f5:e2:27:66:9c:
        ac:de:ee:49:ee:ea:8b:8c:60:b5:cf:00:52:0b:9b:fa:be:5e:
        c2:8c:02:79:cd:55:c1:d9:04:8c:d1:e4:f7:bc:44:95:80:a7:
        4d:3b

◆認証局の階層

証明書がついていたとして、それが本物であるかをどうやって確認するか。

認証局(CA, Certificate Authority)に、証明書を発行してもらう。(認証局の 秘密鍵でディジタル署名をしてもらう)

その認証局は、信頼できるか?

WWWブラウザには、ルート認証局の証明書が予め含まれている。

末端のWWWサイトは、ルート認証局、または、中間認証局から発行された証 明書を提示する。

◆ハンドシェーク

接続時に、乱数(共通鍵暗号に基づく暗号化の鍵を生成するため)を交換する。 その乱数は、普通、サーバ側が提示した証明書に含まれている公開鍵で暗号化 される。

ハンドシェークで使われる公開鍵暗号系

データを暗号化するために使われる共通鍵暗号系

◆https

World Wide Web において、https: というURL で表される Web ページをアクセ スした時にSSL を使った通信が行われる。

Web ブラウザは、証明書を検査できない時には、次のような警告を表示する。

Firefox,証明書の問題点

図? Firefox による man-in-the-middle攻撃の可能性の通知

一般的には、このような Web サイトには接続すべきではない。

■MacOSX付属の暗号関係のプログラム

◆キーチェーンアクセス(Keychain Access.app)

パスワード等の機密情報を暗号化して保存するプログラム。 暗号化には、利用者が指定したパスワードを鍵として使う。 標準では、次のファイルに、暗号化された機密情報を保存している。

「キーチェーンアクセス.app」のパスワードとログインの時に打つパスワード を同じにしていると、自動的に機密データの暗号を解いてアプリケーションに 渡す機能がある。注意すべきことは、ログイン・パスワードを変更しても、 「キーチェーンアクセス.app」のパスワードは変更されないことである。 活用するには、ログイン・パスワードを変更したら、 「キーチェーンアクセス.app」のパスワードも変更するとよい。

何も使っていなければ、「キーチェーンアクセス.app」のパスワードは、初期 パスワードのままになっている。重要な情報を保存していなければ、上記のファ イルを削除し、ログインしなおすことで、リセットするとよい。

次のような MacOSX のアプリケーションが、「キーチェーンアクセス.app」を 使って機密情報を暗号化して保存している。

■実習

実習時間中には、 以下の課題をできるだけ多く行いなさい。全部を行う必要はない。

★練習問題(146) SSL 暗号化のビット数と証明書

SSL で暗号化されたページを表示してみなさい。暗号化のために、何ビット鍵 が使われているか、調べなさい。そこで使われている証明書を表示して、何が 書かれているかを確認しなさい。

対象

Firefox

Safari

★練習問題(147) SSL 認証局の証明書

WWW ブラウザで、SSL 認証局の証明書を表示しなさい。

Firefox

★練習問題(148) sshにおける公開鍵による認証

ssh-keygen コマンドを使って、公開鍵と秘密鍵の組を生成しなさい。鍵の種類 としては、rsa 、または、dsa を使うとよい。生成に成功すると、標準では、 ~/.ssh というディレクトリの下に、2つのファイルが作られる。

前者に、秘密鍵、後者に公開鍵が保存される。秘密鍵の方は、パスフレーズを 鍵とした「対称暗合系」で暗号化されて保護される。パスフレーズは、長く (10-30文字)にする。(この課題で、うまく動作していることを確認するために は、通常のログインのパスワードとは必ず違うものにしなさい。)

ssh でログインする時に、生成した鍵の組を使って認証を行いなさい。 それには、クライアント側に秘密鍵を置き、サーバ側の ~/.ssh/authorized_keys (OpenSSHの場合)に、公開鍵を設定すればよい。 接続時には、秘密鍵を暗号化するために使ったパス レーズを打つ込む。(通常の通常のログインのパスワードを打つことはない。)

coins 内で実験する時には、クライアントもサーバも同じ ~/.ssh を参照する。 したがって、authorized_keys を作成するには、次のようにする(どちらか一方 をやる。両方やってはならない。)。

rsaの場合:

% cd ~/.ssh [←]
% ls id_rsa* [←]
id_rsa          id_rsa.pub
% ls id_rsa* [←]
% cp id_rsa.pub authorized_keys [←]
dsaの場合:
% cd ~/.ssh [←]
% ls id_dsa* [←]
id_dsa          id_dsa.pub
% cp id_dsa.pub authorized_keys [←]
% []

authorized_keys を作成する前には、ssh で接続する時に次のように 「パスワード Password 」が聞かれる。

% ssh azalea20 [←]
Password:
authorized_keys を作成した後には、ssh で接続する時に次のように 「パスフレーズ passphrase」が聞かれる。
% ssh azalea20 [←]
Enter passphrase for key '/home1/prof/yas/.ssh/id_dsa': 
これに対して、ssh-keygen でパスフレーズを打ち込む。(公開鍵による認証に 失敗すると、通常のパスワードによる認証に落ちるのが一般的である。システ ムによっては、認証方式に制限を加えていることがある。)

★練習問題(149) sshにおける公開鍵による認証(icho)

coins で生成した公開鍵を icho にコピーしなさい。
coins% ssh IPEのログイン名@icho.ipe.tsukuba.ac.jp[←]
Password: パスワード[←]
icho% ls ~/.ssh[←]
icho% mkdir ~/.ssh[←]
icho% exit[←]
coins% scp ~/.ssh/id_rsa.pub IPEのログイン名@icho.ipe.tsukuba.ac.jp:~/.ssh/authorized_keys[←]
Password: パスワード[←]
coins% ssh IPEのログイン名@icho.ipe.tsukuba.ac.jp[←]
Enter passphrase for key '/home1/00/i0000000/.ssh/id_rsa': パスフレーズ[←]
icho% []
icho に ~/.ssh/authorized_keys を作成した、icho への ssh による接続 (scp も含む) は、公開鍵による認証方法が利用可能になる。

★練習問題(150) ssh-agentの利用

以下のようにして、ssh-agent を利用してなさい。
% ssh-agent tcsh [←]
% printenv SSH_AUTH_SOCK [←]
% ssh-add -l [←]
		ssh-agentが有効なこと確認
% ssh-add [←]
                鍵の登録
% ssh-add -l [←]
	        鍵が登録されたことの確認
% ssh remote1 [←]
% ssh remote2 [←]
% ssh remote3 [←]
                利用
% exit [←]
                ssh-agentが有効な tcsh の終了
% []
ssh-agent にコマンド(上の例ではtcsh)を与える代りに、csh の環境変数を設 定させるコマンドを出力させ、eval で実行する方法もある。
% eval `ssh-agent` [←]
% printenv SSH_AUTH_SOCK [←]
<以下同じ>
ただし、この方法ではログアウトした時に ssh-agent のプロセスが残ること がある。そうならないように ログアウト時に実行させるプログ ラムで殺す(ssh-agent -k)ようにする。

★練習問題(151) SSHによるトンネルの作成

次のプロトコルについて、ssh で接続先のホストに暗号化された通信路を作成 しなさい。 これには、ssh コマンドに対して -L オプションを与えるとよい。
% ssh -L lport:rhost:rport rhost [←]
-L に与える rhost のホスト名としては、localhost (127.0.0.1) もよく使わ れる。まったく別のホストでもかまわない。
% ssh -L lport:rhost2:rport rhost1 [←]
ただし、rhost1 と rhost2 の間の通信は、暗号化されないことに注意しなさ い。

★練習問題(152) Tera Termの利用

Tera Term (Windows) で、公開鍵を使ってログインできるように設定しなさい。

★練習問題(153) PuTTYの利用

PuTTY (Windows, icho) で、公開鍵を使ってログインできるように設定しなさい。

★練習問題(154) 自宅のコンピュータから公開鍵による接続

自宅のコンピュータから公開鍵による認証を使って coins のコンピュータに ssh で接続しなさい。

★練習問題(155) ディスクユーティリティ.appによるディスクイメージの作成

MacOSX の「ディスクユーティリティ.app (Disk Utility.app) 」は、ハードディス クを管理するためのアプリケーションである。通常は、実際に対して「フォー マット」という作業を行い、ハードディスクを分割して「ファイル」や「ディ レクトリ」を通じてアクセス可能にする。

急に電源が落ちた時などには、ハードディスクの状態が「ファイル」や「ディ レクトリ」としては正常にアクセスできなくなることがある。「ディスクユー ティリティ.app」は、このような時に不整合を修復する 機能がある。コンピュータの電源を入れた時に自動的に実行されることもある。

「ディスクユーティリティ.app」を使うと、1つの大きなファイルを、1個の ハードディスクのように扱うことができる。このように、ディスクに見立てる ことができるデータのことを「ディスク・イメージ」という。「ディスクユー ティリティ.app」を使うと、ディスク・イメージをファイルに保存することが でき、また、ファイルに保存されたディスク・イメージを、「マウント」とい う操作を行い、通常のアプリケーションからファイルとディレクトリの集合と してアクセス可能にする。

MacOSX では、ディスク・イメージを含むファイルの拡張子は、「.dmg」である。

自分で CD-R や DVD-R にファイルを保存する時には、まず、 「ディスクユーティリティ.app」を使って ディスク・イメージをファイルに保存する方法が一般的である。

次のような操作を行いなさい。

★練習問題(156) ディスクユーティリティ.appによる暗号化されたディスクイメージの作成

MacOSX の「ディスクユーティリティ.app (Disk Utility.app) 」を 使って、暗号化されたディスク・イメージを作成しなさい。 暗号化の方式としては、AES が使われることを確認しなさい。

MacOSX の「ディスクユーティリティ.app (Disk Utility.app) 」は、 ディスク・イメージを暗号化する時のパスワードを、

★練習問題(157) ディスクユーティリティ.appによる暗号化されたディスクイメージの作成

◆課題17 暗号

締め切りは、2006年6月23日金曜日とする。 以下の問題、および、回答をテキスト・ファイルに記述し、 レポート提出ページから提出しなさい。

(1) 情報学類の SSL 付きのページを見る時、暗号やディジタル書名について、 どのような技術が使われているか。このページで説明されている範囲で3つ選 んで説明しなさい。

(2) ssh-agent を使って、パスフレーズなしに icho にログインできるように しなさい(加点)。

ssh-add -l コマンドの結果、および、ssh コマンドによる icho への接続の様 子、および、icho における次のコマンドの結果を、シェルのプロンプトや打ち 込んだコマンドを含めてレポートに張りなさい。

(3) 暗号化されていないディスク・イメージと暗号化されてたディスク・イメー ジの2つを作成し、次のようにして暗号化の効果を確認しなさい(加点)。

  1. それぞれに、同じ内容を含むテキスト・ファイルをコピーする。
  2. ディスク・イメージをアンマウントする。
  3. ディスク・イメージを含むファイルに対して、 次のようなコマンドを実行する。
    % strings ディスクイメージを含むファイル | egrep 文字列 [←]
    
    ここで「文字列」には、1 でコピーしたテキスト・ファイル の内容を指定する。コマンドラインからは漢字を打つことが難しいので、 「文字列」には、ASCIIによる簡単なものを指定しなさい。
strings コマンドは、文字列データと文字列以外のデータが混在したファイル から文字列だけを抜き出すコマンドである。ただし、文字列としては、ASCII 文字列しか扱えず、また、完全でもない。


Last updated: 2006/06/16 11:47:33
Yasushi Shinjo / <yas@is.tsukuba.ac.jp>