春学期
(背景) 運転に係るデータ記録装置として,ドライブレコーダの使用が普及している.例えば,車体の加速度 0.45 G を超えるとき,それ以前の10 秒間とそれ以後の5秒間の計15秒間の映像(環境情報),車両挙動(速度,加速度等),また操作(ペダル,操舵等)の情報が自動的に記録される.なぜ,急な加速度が生じた事象は生じたのか.何か原因なのか.ドライブレコーダに記録される情報は,急な加速度が生じた事象に至る過程とその成り行き(事故,ニアミス)の関係を説明する上で有用である.
(問い) さらなる交通事故の削減に向けて,交通移動体から得られるデータの利活用は,重要な課題である.実験で検討すべき問いは,以下に集約される: 運転走行データをどのように効果的に活用できるだろうか.
(目的) 実験 T-8 では,
1) この問いに答えるデータ分析を行うとともに,
2) その事象を防ぐヒューマンマシンシステム(運転支援システム)の設計
を検討したい.
東京農工大学スマートモビリティ研究拠点が運用するヒヤリハットデータベースには,2019年度において16 万件超のドライブレコーダデータが収録されている.これを使用する.詳細は,つぎのWebを参照すること.
2025年度は,先行車(前の車)との追突場面をユースケースに定めます.
自動車のヒヤリハットデータベースを使用して、データベースに収録されたニアミス事象のログデータと映像を考察し,ニアミスの形成過程と背景要因の分析を行う.ここで、以下の事項を学修することを狙います.
1. データベースの利用方法
2. データの整理方法
3. 特徴量(車間距離,速度等の特徴量)の抽出
4. 特徴量の記述統計量(平均,中央値,標準偏差等)の算出
5. 特徴量の可視化(グラフ)
6. 安全評価指標の検討と算出
なぜ,事故やニアミスが発生したのか.その過程や特徴を定量的に示すことは重要です.また,リスク評価を可能にする安全評価指標の検討も重要です.さらに,その安全評価指標を定量化できたとして,そのクライテリア(閾値)はどのように表現可能だろうか.
調査・抽出したニアミス事象を対象に,限りある人の能力を補完する運転支援システムを設計します.Matlab/simulink を使用します.ここで、以下の事項を学修することを狙います.
1. 知覚支援,状況理解支援,意思決定支援,制御介入支援の観点で,ヒューマンマシンシステムの設計を行う.
2. 運転の主体はドライバである.自動車における人間中心の自動化の思想もとでのシステム設計の検討と具体化(多層的な運転支援)を行う.
3. 自動ブレーキを設計してもよい.
自動車運転におけるヒューマンファクターの課題を考察し,その課題を解決するための運転支援機能を設計する.UC-win/Roadドライビングシミュレーターや統計ソフトウェアなど利用し,仮説検証実験を行う.ここで,以下の事項を学修することを狙います.
1. システム設計の観点・実装の方法を学修する
2. 実験計画法に基づく,作業仮説の立案から実験の実施までの一連の手続きを学修する
3. データ計測ならびに統計的解析を学修する
授業時間外で実験に関する質問をしたい場合は,下記のアドレスまでメールにて連絡をお願いします.このアドレスに送られたメールは,担当教官およびTAに転送されますが,通常は,まずTAが対応します.
t-8-info@css.risk.tsukuba.ac.jp
T-8の今年度の内容については,manabaで登録キー1042214で自己登録して確認してください.