電子メール(1)

					2006年4月25日
コンピュータリテラシ

                                       筑波大学 電子・情報工学系
                                       コンピュータサイエンス専攻
                                       新城 靖
                                       <yas@is.tsukuba.ac.jp>

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http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~yas/coins/literacy-2006/2006-04-25
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http://www.coins.tsukuba.ac.jp/~yas/
http://www.cs.tsukuba.ac.jp/~yas/

■連絡事項

履修申請時の科目番号を間違えないように注意する。
  • 次回4月28日金曜日は、教室3A309に集合。
  • 手引き(教育用計算機システム使用の手引き)を持って来る。

    ■復習

    ■補足

    画面に表示されているものを手で打つと間違える。 キーボードの操作で、コピー&ペーストで打てればそうすると便利。

    ■電子メール

    電子メール は、電話や(普通の)手紙と同じように、個人と個人の間で情報を交換するた めの仕組み。

    電子メールを読み書きするプログラムは、 メール・リーダ(mail reader) または、 メーラ(mailer) という。 「リーダ(reader)」といっても、書くこともできる。

    種類

    ■電子メールで重要な考え方と操作

    電子メールを使う上で重要な考え方

    1. 電子メールの形式、ヘッダ、本文
    2. 電子メール・アドレス
    3. メール・ボックス(フォルダ)
    電子メールの基本的な操作
    1. メールを読む
    2. (新たに)メールを出す
    3. 受け取ったメールに返事を出す(reply)
    4. 受け取ったメールを削除する、整理する
    5. 環境を整える、カスタマイズする

    ◆電子メールの形式

    1通の電子メールは、次のような形式を持っているテキスト(文字データ)。

    From: Shiro Yagi <shiro@is.tsukuba.ac.jp>
    To: kuro@cc.tsukuba.ac.jp
    cc: shiro@is.tsukuba.ac.jp
    Subject: Visit my WWW page
    Date: Mon, 23 Jan 2006 23:42:25 +0900
    Message-Id: <200601231442.k0NEgPTw003900@maple.is.tsukuba.ac.jp>
    
    こんにちは。白やぎです。
    
    WWWページを作ったので見てください。URL は、
    	http://www.is.tsukuba.ac.jp/~shiro/
    です。
    
    ♪♪ 白やぎ
    ♪♪ http://www.is.tsukuba.ac.jp/~shiro/
    

    多くのメール・リーダでは、1通の電子メールのことを メッセージ(message) と呼んでいる。

    電子メールのテキストは、大きくヘッダと本文に分かれる。

    ヘッダ(header、頭)
    電子メールの先頭から最初の空行まで
    本文(body)
    空行以降
    重要なヘッダ From: には、差出人の、 To:Cc: には、受取人の電子メール・アドレスが置かれる。

    電子メール・アドレス(e-mail address) とは、電子メールを届ける時に配送プログラムが使う記号。

    現在よく使われている形式:

    user@domain
    @」より前の部分は、個人を特定するための情報。 「@」より後ろの部分は、 電子メールをどのコンピュータに届ければいいかを示している。 ドメイン形式のホスト名が使われる。

    To:: とCc:: は、受取人の電子メール・アドレスが置かれる。どち らにアドレスを書いても同じように届けらるが、To: は、本来の宛先を 書き、Cc: にはついでに連絡したい宛先を書く習慣になっている。Cc は、 Carbon Copy に由来する。

    Date: は、電子メールが出された日付と時刻。

    Subject: は、題名(題目、表題、件名)。

    「件名」という日本語は存在しなかった。

    電子メールの本文は、普通のテキストだが、1行の長さがだいたい漢字で30 文字〜35文字、英語のアルファベットで60文字〜70文字になるように、 折り返されている(改行が入っている)。このようにしておくと、引用という 機能を利用する時に便利。

    電子メールで 引用 とは、返事などを書いたときに何に対する返事か分かりやすいように他の人の 書いた電子メールの一部を自分の電子メールに含めること。

    本文の末尾には、 署名シグニチャ(signature) ) が現われることが多い(付けなくてよい)。

    署名とは、普通の手紙の末尾に署名をするのと同じように、末 尾に自分の名前や自分独自の記号を書く。署名は、簡潔で短いものが好まれて いる。1つの目安としては、「4行以内」。

    電子メールのメッセージの型式は、RFC822 (その改訂版のRFC2822) で定めら れている。

    ◆2種類のメール・ボックス

    電子メールは、「 メール・ボックス 」と呼ばれている ファイル に保存される。メール・ボックスは、プログラムによっては、 フォルダ(folder)トレイ(tray) と呼ばれることもある。 メール・ボックスには、次の2種類がある。

    配送プログラム用メール・ボックス
    電子メールを配送するプログラムが、イ ンターネットから受け取ったメールを個人ごとに分類して保存しておく場所。 メールドロップ(mail drop)ということもある。 多くのシステムでは、 /var/spool/mail/user/var/mail/userという名前のファイル。 (coins では、メールサーバ(mail.coins.tsukuba.ac.jp)の /var/spool/imap/user/user)
    ユーザ用メール・ボックス
    メール・リーダが電子メールを保存しておく場所。

    メール・リーダが表示するのは、多くの場合、後者のメール・ボックスである。 新しく届いたメールを読む時には、前者から後者へメールを移す必要がある 場合がある。 この作業を、 「 (電子メールを)取り込む(incorporate) 」とう。

    配送プログラム用メール・ボックスは、1つのサーバで1人で1つだけだが、 ユーザ用メール・ボックスは、必要に応じていくつか作ることができる。

    図? メール・リーダとメール・ボックス

    図? メール・リーダとメール・ボックス

    ◆SMTPによる電子メールの転送と発信

    電子メールを転送する時には、SMTP (Simple Mail Transfer Protocol)という という通信の仕組み(TCP/IP 上に定義された通信プロトコル、詳しくは、後日) が使われる。

    メール・リーダで電子メールを発信する時にも、SMTP という仕組みが使われることがある。

    ◆POPやIMAP4経由のメール・ボックスのアクセス

    電子メールをため込んでいるコンピュータ(サーバ)にあるメールを、手元の コンピュータにコピーするには、 POP (Post Office Protocol)や、 IMAP(Internet Message Access Protocol) という通信の仕組み(TCP/IP 上に定義された通信プロトコル、詳しくは、後日)を使うことがある。

    POP では、配送プログラム用メール・ボックスを読み書きする機能がある。 IMAP では、それに加えて、複数のユーザ用メール・ボックスを扱えるように なっている。

    図? POP3、IMAP4サーバ経由のメール・ボックスのアクセス

    POP、IMAPサーバ経由のメール・ボックスのアクセス

    ◆メール・リーダの操作

    電子メールを出すには、基本的には、 電子メールの形式 で説明したようなテキストを作り、 電子メールを配送するプログラムに渡す。 本文は、自分の好みのテキスト・エディタ(テキストファイルを編集するプロ グラム)が使えることもある。

    電子メールで仕事をしていると、単にメールを出すだけではなく、受け取った 電子メールに対して返事を出すことが多い。そのため、メール・リー ダでは、返事を出す作業を簡単に行うことができるようになっている。返事 を出すことを リプライ するともいう。返事を出す時には、To: が自動的に作られるだけで なく、Subject: も同じもの、あるいは、にRe: が付い たものが自動的に付けられる。

    電子メールで返事を出す時には、相手のメールの内容を引用することがある。 この時、相手が書いた部分と自分が書いた部分を区別するために、相手 が書いた部分の行の先頭には、引用のための記号を付ける習慣がある。こ の記号には、「>」や 「>>」、 タブがよく使われる。

    受け取ったメールを、別の人に送ることを、 転送(forward) という。 多くのメール・リーダでは、手作業で転送できるようになっている。

    複数のメール・アドレスがある人は、あるアドレスに届いた「全て」のメールを、 別のメール・アドレスの所に自動的に転送できる場合がある。 については、

    メールの数が増えてきたら

    多くのメール・リーダは、長いアドレスや複数のアドレスを短い 別名(alias) で参照できるようになっている。 別名には、個人で付けるものの他に、システム全体で付けるものがある。

    ◆Re:について

    Re: は、「〜に関して」という意味の単語で、英和辞書にも載っている。英語の 手紙、特にビジネスの分野では、日常的によく使われる。返事をする時に使 われるので、reply の略だと思っている人も多い。

    電子メールでも普通の手紙でも、最初にメールを送る時には、 Re:がないSubject: で出し、それについて返事を出す時には、 元のサブジェクトの前に Re: を付けた形の Subject:を使う。 一般的な習慣では、返事に対する返事の場合でも、Re: の数は 増えない。

    ◆電子メールのヘッダのまとめ

    ヘッダには、次のような項目 ( フィールド(field) ) が含まている。

    From:
    その電子メールを書いた人( 差出人 )の電子メールのアドレス。
    To:
    その電子メールの 受取人 の電子メールのアドレス( 宛先 )。
    Cc:
    その電子メールを受取人の電子メールのアドレス。 To: には、本来の宛先を書き、Cc: にはつい でに連絡したい宛先を書くために書く。電子メールを送る時に、 Cc: に自分の電子メール・アドレスを書けば、自分が送った 電子メールを保存することができる。Cc は、Carbon Copy に由来する。
    Subject:
    サブジェクト。 電子メールの題名(題目、表題、件名)。 大量の電子メールを受け取るようになると、題名は、電子メールを分類するた めの重要なキーワードになる。
    Date:
    電子メールが出された日付と時刻。
    Message-Id:
    メッセージ識別子 (メッセージID、Message-ID, Message identifier)。これは、その電子メー ルに対して世界中で重複がないように付けられた名前。IDというのは、 身分証などの意味のIDカードのIDと同じ意味。
    Reply-To:
    返事を出す時に使われるアドレス。電子メールを読むプログラムには、 返事を出す機能がある。その時、普通は、From: に書かれているア ドレスが使われる、Reply-To: がある場合には、それが優先される。
    In-Reply-To:
    返事を出した時に元のメールを差し示す情報。普通、返事を出す時に自 動的にMessage_Id:From:Date: から作られる。
    Received:
    電子メールが通過したコンピュータと時刻の記録。 電子メールがループしているかを調べる時に使われる。
    ヘッダのフィールドは、それぞれ次のような形式になっている。
    name: value
    
    1行に収まらない時には、2行目以降の行の先頭 にタブや空白が置かれる。たとえば、次のような形式になる。
    Subject: Long long long long long
    	 long long long very long subject
    

    ◆Bcc: と Fcc:

    Cc: とよく似たものにBcc:Fcc: がある。

    Bcc: は、blind carbon copy という意味で、そこに電子メールのアドレスを書くと To:Cc: と同じように電子メールが送られるが、 Bcc: は、電子メールを送るプログラムによって 削られてしまうので、最終的なメールには残らない。 Bcc: は、コピーを送ったことをTo:Cc: に知られたくない時や自分用の控えのために使われる。

    Fcc: は、file carbon copy という意味で、そこには電子メールのアドレスではな く、ファイル名を書く。メール・リーダは、メールの内容をそのファイル に保存し、配送プログラムに渡す前にFcc: を削除する。

    Bcc: はほとんどのメール・リーダで使えるが、 Fcc: はメール・リーダによっては使えない。

    ◆電子メール・アドレスの形式

    電子メールのアドレスが、From:To:Cc: に現われ る時には、次のような形で現われることもある。

    From: shiro@is.tsukuba.ac.jp (Shiro Yagi)
    
    ここで、括弧の中には、ユーザの本名を英語やローマ字で書いたものが現われ る。この部分は、人間が読むためのもので、電子メールを配送するプログラ ムは使わない。ユーザの本名は、次のような形式で付加されることもある。
    From: Shiro Yagi <shiro@is.tsukuba.ac.jp>
    
    この場合、電子メール・アドレスは、必ず <> で括る。

    電子メールを出す時には、To:Cc: に 「,」で区切って複数のアドレスを書く こともでる。

    To: shiro@is.tsukuba.ac.jp, kuro@is.tsukuba.ac.jp
    
    もし、1行に入り切らない時には、次のように複数行に分けて書く。
    To: shiro@is.tsukuba.ac.jp, kuro@is.tsukuba.ac.jp,
    	aka@is.tsukuba.ac.jp, momo@is.tsukuba.ac.jp,
    	midori@is.tsukuba.ac.jp
    
    2行目以降は、行の先頭にタブや空白を置く。

    ◆漢字の扱い

    電子メールの本文には、漢字を使ってもよい。 電子メールでは、漢字コードとしては、JIS を使うことになっている。

    ヘッダ部分は、漢字を使うことにはいくつか問題がある。まず、 From:To:Cc:などの電子メールのアドレスを書くべき 所には、JISコードで直接漢字を入れることはできない。 MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)という形式を使って符号化して漢字を 含める機能を持っているメール・リーダもある。

    ◆spamメール

    現在の電子メールの技術では、基本的には、送られてきた電子メールは受け取 るしかない。この性質を悪用して、商品の広告などを、望んでいない大 勢の人に送り付ける行為を繰り返す会社が出てきた。そのようなメール を spamメールUCM(Unsolicited Commercial Mail) 、 または、 UBM(Unsolicited Bulk Mail) という。spamメールの内容は、あまりまともなものはなく、怪しげな商品の広告、 チェーン・レター、spamメールでの広告代行に関する広告であることが多い。

    ■実習

    実習時間中には、以下の課題をできるだけ多く行いなさい。全部を行う必要はない。

    ★練習問題(14) Thunderbirdの設定

    手引き93ページを参考にして、Thunderbird で電子メールを 読み書きできるように設定しなさい。

    ニュースについては、今日はやらなくてもよい。 95ページには誤植がある。

    ★練習問題(15) Thunderbirdで新たにメールを出す

    Thunderbirdで新たに電子メールを出す練習をしなさい。

    ★練習問題(16) Thunderbirdでテキストの観察

    受信したメッセージを選択し、「表示」メニューから「メッセージのソース」 を使って、電子メールのテキストを表示しなさい。

    ★練習問題(17) Thunderbirdでメールに対して返信を行う(返事を出す、リプライする)

    自分自身で送信したメールや隣の人のメールに対して、 Thunderbird の返信機能を使って返事を出しなさい。

    ★練習問題(18) Thunderbirdでその他の操作

    Thunderbirdでメールを読む、新たに (新たに)メールを出す、 以外の次のような操作をしなさい。

    ★練習問題(19) SquirrelMail

    SquirrelMail でメールを読み書きしてみなさい。

    ★練習問題(20) MacOSX Mail.app

    MacOSX 付属の Mail.app を使ってメールを読み書きしてみなさい。 MacOSX Mail.app pop アカウントの設定

    ★練習問題(21) IMAP

    電子メールのアカウントとして POP ではなく IMAP を使ってみなさい。

    ★練習問題(22) IMAP、メールボックスの共有

    複数のメール・リーダで、IMAP によるメールボックスを共有してみなさい。

    ★練習問題(23) Mew/Emacs によるメールの読み書き

    注意:この操作をすると、電子メールが Mew の メールボックスに「取り込まれる」ので、 他のメール・リーダでは読めなくなってしまう。

    注意2:「ファイル」については、後日、説明する。

    手引きの次の部分を参考にして、Emacs 上で動作するメール・リーダ Mew を 使って、メールの読み書きを行ってみなさい。

    ■課題3 電子メールの返信

    TA からのメールを読みなさい。TA にメールの返事を出しなさい。 次のような点に注意すること。 締切りは、次の授業の時間までとする。


    Last updated: Date:
    Yasushi Shinjo / <yas@is.tsukuba.ac.jp>